島津久本

島津久本（しまづ ひさもと）は、江戸時代後期から末期にかけて活躍した薩摩藩の武士であり、都城島津家の24代当主です。都城島津家は、薩摩藩の支藩の一つで、現在の宮崎県都城市一帯を領有していました。

久本は、天保5年（1835年）に、領内の農業を振興するため、百姓寄合田（ひゃくしょうよりあいだ）という制度を創設しました。この制度は、複数の農家が共同で農地を耕作し、その収益を労役負担に充てるというもので、周王朝時代の井田制（せいでんせい）を参考にしたものと考えられています。当時、農村の疲弊が深刻化していた中で、久本は共同耕作による農村の活性化を目指したのです。

また、久本は西洋の先進的な技術にも関心を持ち、積極的に導入しました。西洋砲術を導入し、藩の軍事力の強化に努めたほか、当時、感染症として恐れられていた天然痘の予防のため、牛痘（ぎゅうとう）接種を推奨しました。さらに、産業の育成にも力を入れ、領内の経済発展にも貢献しました。

久本の才能は、藩主である島津斉彬（しまづ なりあきら）にも認められ、東目海岸防御総頭取（ひがしめかいがんぼうぎょそうとうどり）という要職に任じられました。これは、大隅半島沿岸の防衛を指揮する重要な役割で、久本は藩の防衛にも大きく貢献したのです。

安政3年（1856年）、久本は息子の久静（ひさやす）に家督を譲りますが、その久静が島津久光（しまづ ひさみつ）の命で上京中に病死するという不幸に見舞われます。新たに当主となった孫の久寛（ひさひろ）はまだ幼かったため、久本は再び政務を執ることになりました。幕末の激動期において、都城を取り仕切ったのは事実上久本であり、その手腕が発揮されました。

久本の功績は後世にも評価され、大正4年（1915年）には、従四位（じゅしい）が追贈されました。久本は、領民のために尽力し、都城の発展に大きく貢献した人物として、今もなお語り継がれています。

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