島津忠良

島津忠良（しまづ ただよし）

生涯

島津忠良は、戦国時代の薩摩（現在の鹿児島県）の武将であり、島津氏の中興の祖として広く知られています。日新斎（じっしんさい）という号を持ち、日新公（じっしんこう）としても親しまれています。島津氏の分家である伊作氏の出身で、幼名は伊作忠良とも呼ばれていました。

伊作氏当主から相州家継承

父である伊作善久が家臣に殺害され、祖父も戦死するという不幸に見舞われ、幼くして当主不在となった伊作氏を、母である梅窓夫人が一時的に取り仕切ることになります。その間、伊作氏は周辺の豪族からの攻撃に晒されますが、田布施の相州家当主である島津運久の支援によって、難を逃れていました。忠良は幼少の頃から学問に励み、特に儒学に深く通じていました。また、禅の修行にも励み、神道の奥義も極め、これらの三つの教えを融合させて「日学」という独自の思想を確立しました。

相州家の島津運久は、未亡人となった梅窓夫人に求婚し、忠良を養子として迎えることを条件に、再婚を果たします。その後、忠良は元服し、伊作氏を継承し、その後、相州家の当主の座も譲り受けました。忠良は領主として、領民に善政を敷き、その徳は領内外に広く知れ渡るようになりました。

息子・貴久の島津宗家継承

当時の島津宗家は、当主が相次いで病死し、後継者争いが起きていました。忠良は、宗家の混乱を収拾するために、自身の長男である虎寿丸（後の島津貴久）を宗家の養子として送り込みます。そして、島津宗家の守護職を貴久に譲り、自らは後見人として、三州統一を目指すことになります。しかし、この動きに対して、実権を握ろうとする薩州家の島津実久が反発し、内紛が激化しました。

宗家家督を巡る内紛

実久は、忠良と貴久の勢力に対抗するため、各地の豪族を味方につけ、武力で対抗しました。忠良は、実久の攻撃に対して、巧みな戦略と勇猛果敢な戦いぶりで、これを撃破しました。この内紛の中で、忠良は、自身の居城を攻め落とされ、一時的に勢力を失いましたが、着実に力を蓄え、最終的には実久を破り、島津氏の統一を成し遂げました。

島津氏中興の祖

島津氏の統一後、忠良は、政治、経済、文化の発展に尽力しました。琉球との貿易を積極的に行い、鉄砲を大量に購入し、軍事力の強化を図りました。また、家臣団の育成にも力を注ぎ、後の島津氏の発展の基礎を築き上げました。さらに、万之瀬川に橋を架け、城下町の整備や養蚕などの産業を奨励し、領民の生活向上に貢献しました。これらの功績から、忠良は「島津家中興の祖」と称えられています。

忠良は、教育者としても優れていました。自ら作詞した「いろは歌」は、人間としての正しい生き方を教えるものであり、その教えは、後の薩摩藩士の教育にも大きな影響を与えました。また、孫である義久、義弘、歳久、家久の四兄弟の才能を見抜き、その成長を大いに期待していました。

禅宗に深く帰依し、寺院を再建するなど、宗教活動にも熱心でした。忠良は77歳でその生涯を閉じましたが、その思想と業績は、今日まで語り継がれています。

人物

学問への造詣：幼少の頃から学問に励み、特に儒学に深く通じていました。また、禅の修行にも励み、神道の奥義も極めました。
独自の思想「日学」の提唱：儒教、仏教、神道を融合した独自の思想「日学」を提唱しました。この思想は、後の薩摩の文化に大きな影響を与えました。
優れた指導力と統率力：内紛が続く島津家をまとめ上げ、一族を統率する優れた指導力を発揮しました。
教育者としての側面：自ら作詞した「いろは歌」は、人間としての正しい生き方を教えるものであり、その教えは、後の薩摩藩士の教育にも大きな影響を与えました。
経済政策：琉球との貿易を積極的に行い、鉄砲を大量に購入し、軍事力の強化を図りました。また、家臣団の育成にも力を注ぎ、後の島津氏の発展の基礎を築き上げました。

没後

忠良の死後、その遺徳を偲び、加世田に竹田神社が創建され、祭神として祀られました。また、忠良が再建した寺院は、日新寺と改称され、現在でもその名が残っています。

島津忠良は、戦国時代の武将としてだけでなく、思想家、教育者、政治家としても、その才能を発揮し、島津氏の発展に大きく貢献しました。その功績は、今日でも高く評価されています。

関連情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus『島津忠良』 - コトバンク
* 日新公いろは歌『自分を築き上ぐる書』白仁武著 (二松堂書店, 1938)

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