島田元

島田元（しまだ はじめ）

1959年4月14日、京都市右京区太秦の地に生まれた島田元は、日本の映画監督であり脚本家として、多岐にわたる活動を展開しています。協同組合日本シナリオ作家協会の会員であるほか、ライブ映像の製作工房「ライブシネマ」を主宰し、かつては季刊誌『映画王』の編集長を務めました。

早稲田大学法学部へ進学した島田は、大学在学中に早大シネマ研究会にて8mmフィルムを用いた映画製作に没頭します。その成果の一つである長編映画『リトル・ウィング』（1981年、8mm）は、1982年の第5回ぴあフィルムフェスティバル（PFF）一般公募部門で見事入選を果たし、監督としての才能を示す初期の重要なステップとなりました。この回の入選者には、後に映画・テレビ界で活躍する佐藤東弥や中島哲也、音楽家・プロデューサーの岸野雄一らが名を連ねており、当時のインディーズ映画シーンにおける島田の立ち位置がうかがえます。続いて1984年に発表された8mm長編『殺人教室』には、映画監督の内藤誠が出演。同作は、当時の映画評論家である井手雅人・桂千穂の対談でも話題に上り、桂からは往年の石井輝男や岡本喜八を彷彿とさせるギャングアクションとして評価されています。

大学卒業後、島田は高田馬場TomTom倶楽部を結成し、1988年12月8日には初の16mm長編映画『BABY』を発表。この作品には、詩人のねじめ正一や映画監督の小沼勝といった異分野の表現者が参加しています。また、1989年8月18日には、高橋洋や塩田明彦らとともに季刊誌『映画王』を創刊し、自ら編集長を務めました。この雑誌は当初高田馬場TomTom倶楽部が版元でしたが、後に映画王社へ変更され、1990年5月18日発行の第4号まで島田が編集の責任を担いました。創刊号と第2号では、映画監督の森﨑東へのインタビューを敢行するなど、日本の映画文化に新たな視点を提示しようとする意欲が感じられます。雑誌編集に携わる傍ら、島田は商業映画の現場にもスタッフとして参加しており、1990年公開の若松孝二監督作品『われに撃つ用意あり』では照明助手としてクレジットされています。

脚本家としての活動は、1991年2月19日に放送が始まった連続テレビアニメ『緊急発進セイバーキッズ』への参加から本格化します。特に第19話と第30話の脚本を担当しました。翌1992年には、関西テレビ放送の単発ドラマ枠で立て続けに脚本作品が放映されます。黒沢清が監督した『よろこびの渦巻』や、西山洋市監督による『ぬるぬる燗燗』、その続編『ぬるぬる燗燗の逆襲』などを手掛けたほか、自身が監督・脚本・音楽を担当した『パスカルの群』もこの時期に発表しています。中でも『ぬるぬる燗燗』は、1996年に西山洋市監督自身によって新東宝映画としてピンク映画としてセルフリメイクされ、島田は劇場版でも脚本と音楽を担当しました。

1990年代を通じて、島田は数多くのビデオ映画の脚本を執筆し、その多作ぶりを発揮します。特に、1997年4月25日にはビデオ映画『援助交際 特Aランクの女子高篇』で監督と脚本を兼任するなど、活動の幅を広げました。ヤクザもの、ホラー、エロティックなど、ビデオ市場で求められる多様なジャンルに対応する柔軟性を見せました。

2000年代に入ってもその活動は継続し、2005年8月20日公開のオムニバス映画『情無用の刑事まつり』では、自身が監督と主演を務めた『おれ、刑事』を発表。同年12月17日公開のBS-i（現BS-TBS）製作オムニバス映画『スパイ道』では、エピソード『一日スパイまどか』の監督と脚本を手掛けました。

2006年2月には、東京都練馬区にライブ映像の製作工房「ライブシネマ」を開設。ここでは、映画製作で培った技術を生かし、ライブイベントなどの記録・配信映像を手掛けています。「ライブシネマ」には、長年の盟友である西山洋市のほか、朝倉加葉子、森内健介らがスタッフ・協力者として名を連ねています。また、初期の重要作品である『リトル・ウィング』は、2008年6月に東京国立近代美術館フィルムセンターで開催された「PFF30回記念 ぴあフィルムフェスティバルの軌跡 vol.1」で上映され、改めてその存在が注目されました。2013年12月には、「ライブシネマ」の拠点を埼玉県和光市に移転しています。

近年では、2017年9月30日公開のオムニバス映画『LOCO DD 日本全国どこでもアイドル』の一編『富士消失』で監督と脚本を担当するなど、精力的に活動を続けています。島田元は、学生時代の自主映画から出発し、雑誌編集、商業映画のスタッフ経験、そしてテレビドラマ、ビデオ映画、劇場公開作品に至るまで、様々なメディアとジャンルを股にかけて創作活動を続けている、日本の映画界において独自の道を歩む存在と言えるでしょう。脚本家としての手腕に加え、監督としても個性的な視点を持っています。

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