川村修就

川村修就：砲術家から幕府要職へ至る波瀾万丈の生涯

川村修就は、寛政7年（1795年）に、砲術家の家に生まれました。幼名釜五郎、通称庄五郎・清兵衛、号は精斎・閑斎。対馬守、壱岐守、但馬守などの官位に叙せられ、幕府において重要な役割を担った人物です。

若くして御庭番の地位に就き、その後、両番格御庭番、賄頭などを経て、御裏御門切手番に昇進。順調な出世の背景には、老中・水野忠邦の後ろ盾と、御庭番出身で有力な明楽茂正（義理の兄弟）の推薦があったと伝えられています。

天保14年（1843年）、新潟港が幕府領となると、初代新潟奉行に任命されました。この地では、その砲術の知識を活かし、大砲の鋳造など、対外防衛の強化に尽力しました。また、新潟の文化や風俗を絵画や随想に記録するなど、多方面で才能を発揮しました。5年間に渡る新潟奉行在任中には、砂防植栽事業にも取り組み、その功績は後世にまで語り継がれ、1993年には銅像が建立されました。

新潟奉行の後、堺奉行、大坂町奉行などを歴任し、安政2年（1855年）には長崎奉行に就任。その後も小普請奉行や西丸留守居などを務め、幕府の中枢で活躍しました。元治元年（1864年）、高齢を理由に寄合となり、慶応3年（1867年）には、次男の帰元に家督を譲りました。

明治維新後も東京で余生を送り、明治11年（1878年）、84歳でその生涯を終えました。墓所は新宿区正受院。大正13年（1924年）には正五位を追贈されています。

新潟上知：潜入捜査と北海防衛

新潟港は、長岡藩領時代から唐物の密貿易が行われていたという噂がありました。修就は、その真偽を確かめるため、飴屋に扮して新潟に潜入し、情報収集を行ったと伝えられています。この「新潟上知」は、御庭番を指揮して捜査したか、自ら赴いて調査したかのいずれかであると推定されています。

天保14年（1843年）、修就は新潟奉行に任命され、北海防衛の拠点構築を命じられました。これは、日本海近海に出没するようになった異国船への対応が目的でした。修就は、その任務を全うするために、新潟での防衛体制の整備に尽力したのです。

歴史的遺産とその後

川村家の子孫は、修就ゆかりの史料を新潟市歴史博物館と江戸東京博物館に寄贈しました。これらの史料には、修就の肖像画や、明珍に作らせた腹巻など貴重な品々が含まれています。これらの史料は、川村修就の生涯を知る上で貴重な情報源となっています。また、修就の孫にあたる川村清雄は洋画家として活躍し、その作品は現代においても高い評価を受けています。

川村修就は、御庭番としての経験、砲術の知識、そして優れた行政手腕を駆使し、幕府に貢献した人物です。その生涯は、激動の時代を生き抜いた一人の武士の物語として、現代においても人々の関心を集めています。彼の功績は、単なる行政官としての役割を超え、時代を反映する歴史的資料としても、大きな価値を持っています。

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