川湯温泉 (北海道)

川湯温泉

川湯温泉は、北海道川上郡弟子屈町に位置する温泉地です。その名はアイヌ語の「セセキ（熱い）ペツ（川）」を意訳したもので、温泉街の中を高温の温泉川が流れる独特の景観を作り出しています。

泉質

泉質は硫黄泉、酸性明礬泉などで、効能豊かな温泉として知られています。しかし、その強い酸性度から、眼や傷にしみる場合や、貴金属を腐食させる性質があるため、入浴の際は注意が必要です。湯の花が湯船に沈殿するのも特徴の一つです。

温泉街

温泉街は、高温の湯が湧き出る湯元を中心に、ホテル、旅館、土産物店、飲食店などが軒を連ねています。町中を湯の川が流れ、湯けむりと硫黄の香りが漂う、情緒あふれる雰囲気が魅力です。無料の足湯や共同浴場（有料）も利用できます。湯量が豊富でありながら、強酸性泉のため循環ろ過が難しく、全ての施設が源泉かけ流しであることも特徴です。そのかけ流しをアピールするため、「源泉かけ流し宣言」も行われています。

温泉街の周辺には、環境省の川湯エコミュージアムセンターや、第48代横綱大鵬幸喜の功績を讃える大鵬相撲記念館、温泉熱を利用した屋内プール、地元の信仰を集める川湯神社などがあります。

川湯駅前温泉

川湯温泉駅には、無料の足湯が併設されています。駅から国道391号にかけては、2軒の温泉ホテル・旅館があります。こちらの泉質は、川湯温泉とは異なり、中性のナトリウム-炭酸水素塩泉などです。ガイド本や紹介サイトによっては、川湯温泉と一括りにされることもあります。

歴史

温泉の存在は古くから知られていましたが、湯治場としての起源は定かではありません。1886年には温泉宿が設立された記録がありますが、すぐに閉鎖されました。その後、1904年にロシア風建築の温泉宿が設立され、これが現在の川湯温泉の始まりとされています。

大正時代までは1軒のみが営業を続けていましたが、昭和に入ってから自動車道路が開通し、1930年には釧網本線が開通、1934年には阿寒国立公園が設立されたことで、湯治客が急増しました。

第二次世界大戦中は観光需要が冷え込み、終戦後には大火災に見舞われるなどしましたが、1953年に公開された映画『君の名は』のロケ地となったことで、再び観光客が激増し、温泉街は急速に発展しました。

1970年代までは冬季の道路閉鎖が多かったものの、除雪体制や道路整備が進み、年間を通して温泉客を呼び込む体制が整いました。最盛期の1991年度には、年間734,000人の宿泊客が訪れました。

しかし、その後は宿泊客の減少が続いています。2011年の東日本大震災や2018年の北海道胆振東部地震の影響なども重なり、2020年時点では、営業不振により休業したままのホテル・旅館が10軒ほどあり、一部は廃屋化し景観上の問題となっています。さらに、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、2020年度の宿泊客は91,000人にまで減少しました。

「川湯」の名称は、アイヌ語の「セセキベツ」を意訳する際、すでに湯の川温泉（「ユ（湯）ベツ（川）」の意訳）が存在していたため、「川湯」と順序を変えたとされています。

アクセス

鉄道：釧網本線川湯温泉駅より阿寒バスで約10分
自家用車：道東自動車道足寄インターチェンジより国道241号・国道391号経由

川湯温泉は、豊かな自然と温泉、歴史が織りなす魅力的な温泉地です。訪れる際には、泉質への注意を払いながら、その独特の雰囲気を満喫してください。

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