左光斗

左光斗（さ こうと）の生涯

左光斗（1575年 - 1625年）は、明代末期の官僚であり、字を遺直、号を浮丘と称しました。安慶府桐城県左家宕を本貫とする名門の出身で、曾祖父は左麒、祖父は左軫、父は左出穎という家系でした。彼は兄弟が多く、兄に左光霽・左光朝・左光前・左光啓、弟に左光裕・左光先・左光明・左光弼がいました。

官僚としての歩み

1607年（万暦35年）、進士に及第し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。中書舎人に任じられた後、御史として京城の巡視を担当し、その職務において不正を徹底的に摘発しました。彼は吏部の悪官を暴き、偽印70個以上を押収し、100人以上の偽官を逮捕するという大きな功績を挙げました。

また、光斗は屯田の管理を担当することになり、その改善のために三度にわたって上奏し、十四条の建議を行いました。彼の提案は採用され、治水事業が推進され、華北地域で初めて稲作が行われるなど、農業生産の発展に大きく貢献しました。

宦官の劉朝が皇太子朱常洛（後の泰昌帝）の名を騙り、外戚に与えられていた荘田を接収し私物化しようとした際、光斗は「令旨」の封を開けることなく差し戻し、不正を許さない毅然とした態度を示しました。

移宮の案と政治的対立

1620年（万暦48年）7月、万暦帝が病に倒れると、光斗は他の官僚と共に大学士の方従哲に帝の安否を尋ねました。方従哲が病状を隠そうとしたため、光斗は皇太子朱常洛に宮中に侍り看病するよう勧めました。

万暦帝の死後、泰昌帝が即位しましたが、わずか1ヶ月で崩御。その後、乾清宮に居座る李選侍に対し、光斗は皇長子朱由校（後の天啓帝）を慈慶宮に移すよう主張し、大臣たちと協力してそれを実現させました。しかし、楊漣が6日の即位で議論をまとめようとした際、光斗は楊漣を厳しく批判し、唾を吐きかけるという激しい行動にも出ました。

光斗は李選侍の移宮を強く要求し、最終的に彼女を乾清宮から退去させました。改元の議論では、泰昌帝の在位期間が短かったことから、その紀年を省くべきだという意見もありましたが、光斗は万暦48年の7月以前を万暦、8月以降を泰昌元年とするという折衷案を提案し、それが採用されました。

1621年（天啓元年）には、光斗は汪応蛟の策を採用し、天津の屯田を復活させ、通判の盧観象に水利を管理させました。また、熊廷弼の起用を巡る議論では、その才能を認めつつも度量を欠くとして反対する上疏を行い、その後の熊廷弼の敗北を予見しました。

1623年（天啓3年）には、文震孟らの召還を求めましたが、范済世の召還を求めたことで、移宮の案で対立したことが原因となり、受け入れられませんでした。

冤罪と死

1624年（天啓4年）、左僉都御史に任じられましたが、阮大鋮や熊明遇、徐良彦などとの間に政治的な対立を生じさせました。給事中の傅櫆から、光斗が汪文言と共謀して賄賂を受け取ったと弾劾されました。光斗は反論しましたが、罷免を求めざるを得なくなりました。

楊漣が魏忠賢を弾劾すると、光斗はこれに賛同しました。また、高攀龍と共に崔呈秀の不正蓄財を告発しました。しかし、魏忠賢一派は光斗と楊漣を失脚させるため、彼らを官籍から削りました。

1625年（天啓5年）、光斗は汪文言の獄に連座させられ逮捕され、拷問を受けました。錦衣衛の許顕純により、楊鎬や熊廷弼から賄賂を受け取ったという捏造された罪を着せられました。孫奇逢らの尽力も虚しく、7月26日、光斗は獄中で息を引き取りました。享年51。

光斗の死後も、彼の家族や関係者への追及は続き、長兄の左光霽も処刑されました。彼の遺体は辱められましたが、魏忠賢が失脚すると、光斗の名誉は回復され、右都御史、太子少保の位が追贈されました。南明の福王政権では、忠毅と追諡されました。著書には『奏疏』3巻と『文集』5巻があります。

左光斗は、その生涯を通して不正と戦い、正義を貫こうとした官僚であり、政治的な陰謀に翻弄され、悲劇的な最期を遂げた人物として、歴史に名を残しています。

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