高攀龍

高攀龍（こう はんりゅう、1562年 - 1626年）は、明代末期の儒学者であり、官僚としても活躍した人物です。字は存之、号は景逸といい、常州府無錫県（現在の江蘇省無錫市）の出身です。彼は東林七賢の一人として知られ、その思想と行動は後世に大きな影響を与えました。

若き日の学問と官僚としての始まり

高攀龍は若い頃から学問に励み、特に朱子学を深く探求しました。1589年（万暦17年）には進士に及第し、官僚としてのキャリアをスタートさせます。最初は行人に任命されましたが、その後の彼の行動は、単なる官僚の枠には収まらないものでした。

批判精神と左遷

四川僉事の張世則が『大学初義』を著し、程頤と朱熹の章句を批判すると、高攀龍はこれに反論しました。これは彼の学問に対する真摯な姿勢を示すものでしょう。1593年（万暦21年）には、侍郎の趙用賢と都御史の李世達が告発されて官を去った際、高攀龍は大学士の王錫爵による諸臣の排斥を非難する上疏を行いました。しかし、その結果、戸部郎中の楊応宿と互いに弾劾しあい、両者とも処罰を受け、高攀龍は掲陽添註典史に左遷されることになりました。彼は赴任後7ヶ月で辞職し、故郷に戻り、約30年間を自宅で過ごしました。この間、彼は顧憲成らとともに東林書院で講学を行い、学問の深化に努めました。

政界復帰と権力闘争

1620年（泰昌元年）、天啓帝が即位すると、高攀龍は光禄寺丞として再び官界に復帰しました。翌年には光禄寺少卿に進み、1622年（天啓2年）には鄭養性を弾劾する上疏を行いました。また、孫慎行が紅丸の案をめぐって方従哲を弾劾した際には、『春秋』を引用して方従哲の投獄を求め、給事中の王志道が方従哲を弁護した際には手紙を送って批判するなど、彼の強い信念がうかがえます。その後、太常寺少卿に転じましたが、学問の必要性を上疏した際に、その文章中の「不孝」という言葉が天啓帝の怒りを買い、厳しい譴責を受ける寸前でしたが、葉向高の弁護により、俸禄1年剥奪で許されました。その後も大理寺少卿、太僕寺卿、そして刑部右侍郎と要職を歴任しました。

左都御史としての活躍と失脚、そして最期

1624年（天啓4年）には、左都御史に任命され、権力闘争の最前線に立ちます。楊漣が魏忠賢の二十四大罪を弾劾し、東林党と閹党の対立が激化する中、高攀龍は趙南星と共に、魏忠賢に対抗しました。御史の崔呈秀の汚職を暴き、趙南星が崔呈秀を辺境に送るよう発議したことがきっかけで、崔呈秀は魏忠賢に助けを求めます。その結果、高攀龍は趙南星とともに弾劾され、官を去ることになりました。1625年（天啓5年）には、南京御史の游鳳翔に弾劾され、官籍から削除されました。1626年（天啓6年）には、崔呈秀の恨みにより、李実が周起元を弾劾した上疏の中に高攀龍の名前が紛れ込まれ、逮捕されることになりました。逮捕状が出されたことを知った高攀龍は、門弟や弟と共に酒宴を開いていた後、衣冠を正して池に飛び込み、自ら命を絶ちました。享年65歳でした。

死後の評価と遺産

高攀龍の死は、彼の正義感と不屈の精神を示すものとして、後世に語り継がれています。1628年（崇禎元年）には、太子少保・兵部尚書の位を追贈され、諡号は忠憲とされました。彼の著書には、『大易易簡説』3巻、『周易孔義』1巻、『春秋孔義』12巻、『就正録』2巻などがあり、彼の学問に対する深い理解と見識を示すものです。高攀龍は、その生涯を通して、学問の探求と社会正義の実現に尽力した人物として、歴史に名を刻んでいます。

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