左宗棠鶏

左宗棠鶏（ツォゾンタンジー）とは

左宗棠鶏（さそうとうどり、ツォゾンタンジー、英語: General Tso's chicken）は、アメリカ合衆国やカナダの中華料理店で一般的な揚げ鶏料理です。甘辛いソースが特徴で、一般的に湖南料理と認識されています。しかし、その起源は明確ではなく、様々な説が存在します。

料理名の由来

料理名は清朝末期の政治家、左宗棠（さそうとう、1812 - 1885）に由来します。しかし、左宗棠自身がこの料理を食べたという記録はなく、湖南省の省都である長沙市や彼の故郷である湘陰県にも同様の料理はありません。左宗棠の子孫にインタビューした際にも、そのような料理は聞いたことがないという回答でした。

この料理の起源にはいくつかの説があります。Eileen Yin-Fei Loは、自身の著書で、この料理はシンプルな湖南の鶏料理に由来し、「Zongtang」は左宗棠の「宗棠」ではなく、「祠」を意味する同音異義語「宗堂」に由来すると主張しています。実際に、「Zuo ancestral hall chicken」と表記されることもあります。

左宗棠鶏は、英語で様々な名前で呼ばれています。例として、Governor Tso's chicken、General Gau's chicken、General Tao's chicken、General Tsao's chicken、General Tong's chickenなどがあり、言語学者のVictor Mairは、これらの多様な名前は、現代のピン音を用いた綴りである「General Zuo's Chicken」に収束していくだろうと述べています。

彭長貴の主張

ニューヨーク・タイムズの記事によると、台湾を中心に活躍する湖南料理の料理人、彭長貴（ペン・チャンクイ、別名：Peng Jia）が左宗棠鶏を開発したとされています。彭長貴は20世紀初頭の有名中華料理人、曹藎臣の弟子であり、中国国民党政府のお抱え料理人でした。国共内戦後、台湾に移り、1973年にニューヨークで自身のレストランを開きました。そこで、彭は伝統料理をアレンジし、左宗棠鶏を生み出しました。当初、砂糖は使われていませんでしたが、湖南以外の人々の口に合うように、甘みを加えて変化していきました。この料理が人気になったことで、湖南料理の料理人やフードライターは、左宗棠鶏を湖南料理の国際的な評判を高めるきっかけとして認めるようになりました。

しかし、彭長貴が湖南省にレストランを開店した際、左宗棠鶏が甘すぎると不評で、店は成功しませんでした。

ニューヨークにある彭長貴のレストランは、左宗棠鶏を最初に提供した店だと主張しています。彭長貴は、左宗棠鶏がありふれた材料を用いているにもかかわらず、新規性があることを強調しています。1977年のレビューでは、「左宗棠鶏は高温で焼色がつき香りが出るまで炒めた一品」と答えています。

ワンの主張

ニューヨークのシュン・リー・パレスも、左宗棠鶏発祥の店であると主張しています。彼らの主張によると、左宗棠鶏は1972年にT. T. ワンという中国移民のシェフによって発明されました。シュン・リー・パレスのオーナーであるマイケル・トンは、「我々がアメリカ全土で初の湖南料理レストランを開店し、提供する4つの料理は今日のアメリカ合衆国のあらゆる湖南料理レストランで見ることができる」と述べています。

ワンが現代の左宗棠鶏のレシピである鶏をパリパリに揚げる調理法を持ち込んだことで、二つの主張の対立はいくらか緩和されました。しかし、それは「General Ching's chicken」としての話であり、「General Ching」なる人物については不明です。一方で、左宗棠鶏の名前の由来をたどると彭シェフにたどり着きますが、彼の調理法は現代アメリカの左宗棠鶏とは異なります。

調理法

伝統的な調理法では、以下の材料が使用されます。

ソースの材料: 醤油、黄酒、米酢、砂糖、コーンスターチ、乾燥させた赤唐辛子、ニンニク
衣の材料: 卵、コーンスターチ
主材料: ブロッコリー、鶏肉（一口大に切る）

地域毎の違い

アメリカ合衆国海軍兵学校では、この料理は「Admiral Tso's Chicken（左公鶏）」として提供されており、海軍の慣習を反映しています。

北米地域外で左宗棠鶏を提供する有名な店としては、台湾の彭長貴の店があります。この店の料理は、甘みがなく、鶏を皮ごと調理し、醤油が重要な役割を果たす点が、北米の一般的な左宗棠鶏とは異なります。

栄養価

一般的な中華料理店で提供される左宗棠鶏は、約1,300カロリー、コレステロール300mg以上、飽和脂肪酸11g、ナトリウム3.2gを含んでいます。この料理は、一日のナトリウム推奨摂取量を大幅に超過し、推奨摂取カロリーの半分以上、飽和脂肪酸推奨摂取量の1/3～1/2に相当する量を含んでいます。鶏もも肉約100gを使用すると、20～30gのタンパク質を摂取できますが、ナイアシン、ビタミンB6、リン、亜鉛の推奨摂取量もオーバーします。

関連項目

アメリカ風中華料理
カナダ風中華料理
炸子鶏
レモンチキン
鶏料理の一覧
オレンジチキン
セサミチキン
油淋鶏
湖南料理
左宗棠
将軍のチキンを探して（2014年のドキュメンタリー映画）
* 白切鶏

この記事では、左宗棠鶏の歴史、名前の由来、調理法、栄養価について詳しく解説しました。その起源には諸説ありますが、アメリカやカナダで人気のある中華料理であることは間違いありません。

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