市原王

市原王の生涯

市原王（いちはらのおおきみ、生年不詳〈一説では養老3年《719年》もしくは養老7年《723年》〉- 没年不詳）は、奈良時代に生きた日本の皇族です。彼は従五位上・安貴王の子であり、志貴皇子や川島皇子の曾孫にあたります。官位は正五位下で、造東大寺長官を歴任しました。

経歴の概要

市原王は天平11年（739年）から写経司舎人として仕官し、天平15年（743年）には無位から従五位下に叙せられました。その後、聖武天皇の時代には、写一切経所の長官を務め、さらに玄蕃頭や備中守など重要な役職に就いていきました。そして天平18年（746年）以降、東大寺の盧舎那仏像の造営が進む中で、金光明寺造仏長官や造東大寺司知事として大仏造営の監督をしました。聖武天皇が東大寺に行幸された際、天平感宝元年（749年）には従五位上に叙される充実した経歴を持っています。

天平勝宝2年（750年）、孝謙天皇の命により造東大寺司の諸官人に叙位が行われ、市原王は正五位下に昇叙されました。しかし、同じ時期に昇進した下僚たちと比較すると、彼の昇進は1階に留まっており、若干の不遇を被っていた可能性があります。天平勝宝4年（752年）には東大寺大仏開眼供養会への出席者名簿に市原王の名は見当たらず、その後の動静は不明となっています。

私生活と結婚

時期は不明ですが、市原王は白壁王（後の光仁天皇）の娘である能登女王を妻に迎えています。木本好信によると、この結婚は白壁王と市原王の父である安貴王の親族関係が背景にあり、両者の母親も同じ紀氏の出身であったことが考えられます。

天平宝字4年（760年）には光明皇后の葬儀で山作司を務め、同年12月には摂津大夫に任じられました。その後、恵美押勝暗殺未遂事件に伴い、4月には造東大寺長官に再任されました。しかし、翌年には新たに吉備真備がその任に就くこととなり、市原王のその後については詳細が伝わっていません。

死去の可能性

市原王がいつ亡くなったか、または引退したのかは不明ですが、いくつかの説があります。天平宝字7年（763年）中に亡くなった、または同年内に引退した可能性、あるいは藤原仲麻呂の乱に関連して失脚した説が存在します。光仁天皇の娘婿でありながら地位が正五位下に止まっていたことから、宝亀元年（770年）の義父の即位及び妻への内親王宣下が行われる前に亡くなった可能性も高いとされています。

人物像

市原王は『万葉集』に8首が採録されており、文学的な活動もしていました。大伴家持とは複数回私的な宴に同席し、親交があったことが示されています。彼の生涯は、皇族としての義務を果たす一方で、文学者としての側面も持っていました。
その功績は、奈良時代の文化と皇族の歴史に刻まれています。

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