市川段四郎 (2代目)

二代目市川段四郎の生涯と芸風

二代目市川段四郎（いちかわ だんしろう）は、1855年9月2日（安政2年7月21日生まれ）から1922年2月6日（大正11年）まで生きた、明治・大正時代の著名な歌舞伎役者であり、初代市川猿之助としても知られる。彼の屋号は澤瀉屋であり、紋は猿之助の定紋が澤瀉、段四郎の定紋が三升に段の字で替紋が八重澤瀉とされています。彼の本名は喜熨斗亀次郎（きのし かめじろう）で、俳名には笑樂や壽猿がありました。

来歴

段四郎は、江戸の浅草で立師、坂東三太郎の子として誕生しました。1859年には十三代目市村羽左衛門の門下に入り、市村長松として子供芝居に出演することになります。その後、1862年に江戸市村座に出てから、五代目坂東彦三郎のもとで坂東羽太作と改名し、1870年には河原崎権十郎の弟子として山崎猿之助と名乗りました。

しかし、兄弟弟子とのトラブルにより、1874年には師の許可なく『勧進帳』の弁慶を演じたことで破門され、以降は松尾猿之助と改名を繰り返しながら旅興行で苦労しつつ実力を磨いていきました。1890年に破門が解かれ、初代市川猿之助としての活動が始まりました。1891年、東京歌舞伎座での『出世景清』では名題に昇進し、九代目市川團十郎の高弟として歌舞伎の中心的な存在となりました。

段四郎は九代目の死後、歌舞伎座で行われた追善興行で一門を代表して口上を述べ、1910年に二代目市川段四郎を襲名します。彼は以降、東京歌舞伎の長老として重要な存在となり、1922年の明治座公演終了後に体調を崩し、急逝しました。彼の墓所は台東区の寛永寺にあります。

芸風

段四郎は男性的な芸風を持ち、表現力に優れた役者でした。義太夫狂言の老役が得意であり、特に『仮名手本忠臣蔵』の高師直や『伊賀越道中双六』の平作、『平家女護島』の俊寛などが当たり役でした。また、市川宗家のお家芸においても『勧進帳』の弁慶や『鎌髭』の六部が特に有名です。彼は『鎌鬚』を復活上演させ、事実上この作品が澤瀉屋のお家芸として確立されました。加えて、彼は『積恋雪関扉』や『奴道成寺』などの所作事にも長けていました。

二代目段四郎は、反骨精神あふれる芸人として、坪内逍遥の新歌舞伎に挑戦したり、当時の演劇形式であった新派にも出演するなど、歌舞伎の革新を推進した影響力のある存在でした。

親族

段四郎の親族には、初代市川猿翁（後の二代目市川猿之助）をはじめ、次男に初代市川壽猿、三男に八代目市川中車（八代目市川八百蔵）がいます。四男の市川芝海老は夭折していますが、五男の二代目市川小太夫は活動を続け、他に娘もいました。

孫に三代目市川段四郎や初代市川三四助、二代目花柳泰輔、二代目市川蝙蝠、喜熨斗勝がいます。曾孫には二代目市川猿翁や四代目市川段四郎、十一代目市川高麗蔵などが名を連ね、さらに玄孫には九代目市川中車（香川照之）や四代目市川猿之助がいます。

名優として名を馳せた二代目市川段四郎の足跡は、歌舞伎界の歴史の中で重要な位置を占めており、その才能と影響は今も多くの後進に受け継がれています。

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