市川鰕十郎 (5代目)

五代目 市川 鰕十郎の生涯

五代目 市川 鰕十郎（いちかわ えびじゅうろう）は、1852年（嘉永5年）に誕生し、1903年（明治36年）10月7日に他界した上方の歌舞伎役者です。彼の屋号は播磨屋であり、俳名は新升。本名は久保田 蝦十郎です。彼の父は二代目市川鰕十郎とされています。

初期の活動

市川鰕十郎は三代目中村芝翫の門徒として、初めは中村駒三郎の名を名乗り小芝居での活動を始めました。その後、四代目市川小團次にその才能を見込まれ、養子として迎え入れられました。彼は小團次の前名を襲名し、二代目市川米十郎となります。1858年には江戸に移り、三月市村座での公演『江戸櫻清水清玄』にて蒲冠者範瀬や奴淀平など、五つの役を演じました。この公演以後、彼は江戸での活動を本格化させました。

江戸での活動

江戸での鰕十郎は『小袖曾我薊色縫』の下男杢助実、また『三人吉三廓初買』の八百屋久兵衛、『八幡祭小望月賑』の作助など、実直な役柄を得意としました。養父である市川小團次の舞台でも活躍し、脇役として存在感を示すことができました。しかし、彼の上方仕込みの演技スタイルは江戸の観客にはなかなか受け入れられず、当時の役者評判記『役者商売往來』では、江戸に留まらず上方に戻った方が良いと厳しく評されました。このことが彼の心に残ることになります。

上方への帰還

慶応元年（1865年）ごろ、養父との不和から上方へと戻ります。改名し中村梅若として活動を再開します。ここで二代目尾上多見蔵の後援を受け、1869年10月には大阪で『絵本太功記』をもって五代目市川鰕十郎を襲名します。

後年の活動と晩年

その後、彼は養父の実弟である初代市川右團次の一座に加わり、老役や敵役を得意とされましたが、しばらくして病気に見舞われ、舞台から退くことになります。晩年は大阪の上本町八丁目の自宅で療養生活を送り、舞台復帰には至りませんでした。

五代目市川鰕十郎の生涯は、役者としての道を切り開くための苦悩や努力の物語でもありました。彼の舞台活動は、その後の上方歌舞伎に大きな影響を与えたことが伺えます。

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