布引の滝 (兵庫県)

布引の滝：歴史と自然が織りなす神戸の絶景

神戸市中央区を流れる布引渓流にある布引の滝は、雄滝、夫婦滝、鼓滝、雌滝からなる4つの滝の総称です。その壮大な景観から、古くから人々を魅了し、日本三大神滝の一つ、さらには日本三大名瀑にも数えられることがあるほどに知られています。

神話と伝説が宿る聖地から観光地へ

かつては、役小角が開いたとされる滝勝寺の修験道場として、世俗から隔絶された霊場でした。しかし現在では、渓流沿いや布引山（森林浴の森100選）一帯から滝を経て布引ハーブ園へと続く遊歩道が整備され、新神戸駅から徒歩圏内というアクセス抜群の観光地へと変貌を遂げています。誰でも気軽に訪れ、その雄大な自然を満喫できるようになりました。

四つの滝と周辺の景観

布引の滝は、六甲山の麓を流れる生田川の中流に位置し、上流から順に雄滝、夫婦滝、鼓滝、雌滝と続きます。

雄滝: 布引の滝の中でも最大で、高さ43m、滝壺の面積は430㎡、深さ6.6mにも及びます。滝の横には、最大で10畳もある甌穴（ポットホール）が5つあり、竜宮城への入り口という伝説も残されています。
夫婦滝: 雄滝に比べると小規模ですが、優美な姿が特徴です。高さは9mです。
鼓滝: 高さ8mの滝で、その名の通り、滝壺に水が流れ込む音が太鼓を打つような響きを持つと言われています。
雌滝: 高さ19mの滝で、雄滝に次ぐ規模を誇ります。

これらの滝に加え、周辺には徳光院（滝勝寺跡に建立された禅寺）、雷声寺、布引展望台、布引五本松ダム（日本最古のコンクリートダム、国の重要文化財）、布引貯水池（ダム湖百選）など、見どころが豊富です。また、布引ハーブ園も近隣にあり、滝の散策と合わせて楽しめるスポットとなっています。

文学作品に彩られた歴史

布引の滝は、古くから数々の文学作品に登場し、その美しい景観は多くの文人墨客を魅了してきました。平安時代の歌物語『伊勢物語』や歴史物語『栄花物語』にも登場するほか、藤原定家や在原業平といった著名な歌人が和歌に詠んでいます。また、浄瑠璃・歌舞伎『源平布引滝』や鉄道唱歌にもその名が取り上げられています。これらの作品を通して、布引の滝が人々の心に深く刻まれてきた歴史を垣間見ることができます。

例えば、藤原定家の歌「布引の滝のしらいとなつくれは 絶えすそ人の山ちたつぬる」は、滝の流れと、その流れに沿って連なる山々の様子を繊細に表現しています。在原業平の歌「抜き乱る人こそあるらし白玉の 間なくも散るか袖のせばきに」も、滝の美しさと、それを眺める人々の心情を見事に捉えています。

アクセスと周辺情報

布引の滝へのアクセスは非常に良好です。山陽新幹線や神戸市営地下鉄の新神戸駅から徒歩でアクセス可能で、雌滝までは約10分、雄滝まではさらに8分程度歩きます。周辺には、布引中学校や北野町山本通などがあり、観光と合わせて散策するのもおすすめです。

その他の布引の滝

「布引の滝」という名称の滝は、神戸市以外にも全国各地に存在します。京都府与謝郡伊根町、三重県熊野市、三重県南牟婁郡紀宝町、三重県津市、鳥取県鳥取市、鹿児島県姶良市、屋久島などにも同名の滝があり、それぞれ独自の景観と歴史を持っています。

布引の滝は、自然の雄大さ、歴史の重み、そして現代の利便性を兼ね備えた、神戸を代表する観光地と言えるでしょう。訪れた際には、その魅力を存分に感じ取ってください。

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