希望 (高速フェリー)

高速フェリー『希望』の歴史とその役割

『希望』は、静岡県が所有していた高速フェリーであり、かつてはテクノスーパーライナーの実験船「飛翔」を改装したものです。この船は、東海地震などの災害時に備えた防災船としての運用も期待されていました。2005年には運用を廃止され、その後は売却の模索が続きましたが、最終的には廃船となりました。

船体の概要

『希望』は、三菱重工業と三井造船によって共同設計されたテクノスーパーライナーのTSL-A船型実験船「飛翔」として建造されました。1994年に行われた実海域試験では、最高時速54ノット（約100キロメートル）を記録し、最大波高6メートルの厳しい状況下でも40ノット（約74キロメートル）の航行を実現しました。これにより、高い性能が証明され、1995年には日本船舶海洋工学会のシップ・オブ・ザ・イヤーにも選出されるほどでした。

船の改造後、1997年には静岡県に引き渡され、『希望』と名付けられました。船体の配色は、駿河湾の青色、波の白色、地域特産のオレンジ色のミカン、緑茶をイメージしたものでした。普段はカーフェリーとして旅客や車両の輸送に利用されており、災害時の役割も期待されていました。

運航と廃止

伊豆半島の道路事情から、観光シーズンには渋滞が発生しやすく、海路を利用する意義がありました。『希望』は2005年9月まで、県がエスパルスドリームフェリーに運航を委託し、清水港と下田港を結んでいました。しかし、同年10月以降、原油価格の高騰により運航が休止され、その後は廃止・売却されることとなります。

運航当時は、車両の積み下ろしに時間がかかることがデメリットであったものの、高速であったため需要がありました。しかし、運営コストの高さから、県は維持継続を断念することになったのです。

廃船となった経緯

航路廃止後の2006年、清水港から横浜港に移動され、売却先を探すことになりました。県は売却にあたって、特定の用途制限を設けたものの、エンジンのリース契約解除も影響し、運用には一部の新たな課題が生じました。入札は行われましたが、売却価格が予定価格に達しないことが続きました。

最終的には、船体は別の不動産会社に落札されましたが、エンジンについての取り決めが不透明であったため、落札者は購入契約を延期することを求めました。最終的に2007年5月、静岡県は三菱重工業に対し、658万円で本船を売却しました。その後、船は解体されずに廃棄処理業者に転売され、技術流出防止の観点から懸念が生じました。

結論

『希望』は、静岡県にとってかつての重要な防災船であり、海を利用した地域の輸送手段のひとつとして機能していましたが、運用の課題とコストが影響し、廃船に至る運命となりました。日本における防災の取り組みや、地域ニーズに応じた海路の重要性を再認識させる出来事であったと言えるでしょう。

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