帝国石油

帝国石油株式会社（現INPEX）

帝国石油株式会社は、かつて石油や天然ガスの探鉱、開発、生産、販売を手掛けていた日本の企業です。2008年に国際石油開発帝石（現INPEX）に吸収合併され、その歴史に幕を閉じましたが、日本のエネルギー開発に大きな足跡を残しました。

概要

1941年、戦時下の資源確保を目的として、国内の石油鉱業部門を統合する形で国策会社として設立されました。設立当初は半官半民の形態を取り、日本の石油資源開発を担う重要な役割を担いました。戦後、1950年に民営化され、民間企業として新たなスタートを切りました。

その後も、八橋油田、磐城沖ガス田、南長岡ガス田といった国内の主要な油田・ガス田を発見し、日本のエネルギー自給率向上に貢献しました。海外においても、ベネズエラ、エジプト、コンゴ、アルジェリアなどで油田・ガス田の開発を行い、国際的な資源開発企業としての地位を確立しました。

2006年には、国際石油開発株式会社と経営統合し、国際石油開発帝石ホールディングス（現INPEX）の完全子会社となりました。そして、2008年に国際石油開発帝石に吸収合併され、法人としての帝国石油は消滅しました。

主な事業

天然ガス採掘

帝国石油は、南長岡ガス田と成東ガス田の2つの主要なガス田を保有し、天然ガスを生産していました。

南長岡ガス田は、新潟県長岡市に位置し、日本最大級のガス処理能力を持つ越路原プラントと親沢プラントを有していました。越路原プラントでは、日量190万Nm3のガス処理能力を誇り、隣接する火力発電所に天然ガスを供給していました。親沢プラントも日量166万Nm3のガス処理能力を有し、地域のエネルギー供給を支えていました。

成東ガス田は、千葉県山武市に位置し、水溶性天然ガス田として知られています。ここでは、かん水に溶解している天然ガスとヨウ素を産出していました。

かつては福島県楢葉町の沖合に磐城沖ガス田も存在しましたが、2007年に操業を終了しました。

石油精製

帝国石油グループの帝石トッピング・プラント株式会社は、頸城製油所を保有していました。頸城製油所は、日本で唯一国産原油のみを精製する製油所であり、その処理能力は4,410バレル/日と小規模ながら、日本のエネルギーセキュリティに貢献していました。

また、頸城製油所で精製されたガソリンなどを販売するため、長野県中部から新潟県上越地方にかけて16店のガソリンスタンドを経営していました。

東シナ海ガス田問題

帝国石油は、日本と中国が排他的経済水域を巡り対立している東シナ海ガス田問題にも関わっていました。1969年に試掘出願を行いましたが、長らく保留とされていました。2005年になって試掘権が付与されたものの、その後の政権交代により、開発は停滞しました。この問題は、資源開発における政治的影響の大きさを物語る事例と言えるでしょう。

新潟との繋がり

帝国石油は、鉱業所などが置かれた新潟市と深い繋がりがありました。同社が自社用に設けた道路や橋梁が、後に市に寄贈され、公共に供されたケースがいくつか存在します。

信濃川に架かる「帝石橋」（現在の平成大橋）
国道402号の一部区間（通称：産業道路）
* 新潟駅前にあった「新潟帝石ビルディング」（県内初のオフィスビル）

これらの事例は、帝国石油が地域社会に貢献してきた証と言えるでしょう。

現在

帝国石油は、2008年に国際石油開発帝石に吸収合併されましたが、同社の事業や技術は、現在のINPEXに引き継がれています。INPEXは、日本を代表する資源開発企業として、世界各地で石油・天然ガスの探鉱、開発、生産を行っています。

帝国石油の歴史は、日本のエネルギー開発の歴史そのものであり、その遺産は、INPEXを通じて、これからも受け継がれていくでしょう。

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