師岡屋伊兵衛

師岡屋伊兵衛（生没年不詳）は、幕末から明治時代にかけて横浜で地本問屋を営んでいた人物です。日新堂と号し、文久年間から明治期にかけて横浜弁天通5丁目で活動していました。彼は、当時横浜に居を構えた唯一の版元として知られており、横浜絵の発展に大きく貢献しました。

師岡屋伊兵衛は、歌川芳虎、初代立祥、永林信実といった浮世絵師の錦絵を出版しています。これらの作品は、当時の横浜の様子を鮮やかに描き出しており、異国情緒あふれる風景や人々の生活を知る上で貴重な資料となっています。

主な作品

歌川芳虎 『武州横浜八景之内 岩亀楼夜の雨』 大判 錦絵 文久1年：横浜の遊郭である岩亀楼の夜の雨の情景を描いた作品です。
立祥 『横浜高台英役館全図』 大判3枚続 錦絵 慶応3年‐明治2年：横浜の高台に建てられたイギリス領事館の全景を描いた作品です。
立祥 『横浜本町海岸仏郎斯（フランス）役館之全図』 大判3枚続 錦絵 慶応3年‐明治2年：横浜本町海岸に建てられたフランス領事館の全景を描いた作品です。
永林信実 『横浜名所之内 大日本横浜根岸万国人競馬興行ノ図』 大判 明治5年：根岸競馬場で行われた競馬の様子を描いた作品です。多くの外国人が集まり賑わう様子が描かれています。

師岡屋伊兵衛の出版した錦絵は、横浜が開港し、国際的な港町として発展していく様子を伝える貴重な歴史資料としての価値も有しています。

参考文献

日本浮世絵協会編 『原色浮世絵大百科事典』第3巻 大修館書店、1982年 ※143頁
吉田漱 『浮世絵の基礎知識』 雄山閣、1987年 ※162頁
* 永田生慈『資料による近代浮世絵事情』 三彩社、1992年 ※208頁

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