常盤井宮恒明親王

常盤井宮恒明親王

常盤井宮恒明親王（ときわいのみや つねあきしんのう、嘉元元年（1303年） - 観応2年（1351年））は、鎌倉時代後期から南北朝時代にかけての皇族です。亀山天皇の第七皇子として生まれ、母は西園寺実兼の娘である昭訓門院（西園寺瑛子）です。官位は一品・式部卿。

生涯

恒明親王は、幼少の頃より父である亀山法皇から深い寵愛を受け、甥にあたる尊治親王（後の後醍醐天皇）と共に育てられました。嘉元3年（1305年）に亀山法皇が崩御すると、その遺言により、財産の多くが恒明親王に与えられました。さらに、法皇は後二条天皇に対し、次の皇位は天皇の嫡男である邦良親王ではなく、恒明親王に継がせるように命じました。

この遺言を受け、恒明親王の母である昭訓門院の兄で関東申次であった西園寺公衡は、直ちに鎌倉幕府にこの旨を伝え、妹である永福門院の夫である伏見上皇の協力を求めました。伏見上皇も、息子である後伏見天皇を退位させた後宇多上皇（亀山法皇の子で後二条天皇・尊治親王の父）への反感から、これに同意する姿勢を示しました。当時、持明院統の富仁親王（後の花園天皇）が立太子されており、両統迭立が継続するならば、花園天皇の次の皇位は大覚寺統から選ばれる以上、誰が選ばれても大きな違いはないという判断があったとみられます。しかし、幕府は大覚寺統の分裂を招きかねない恒明親王の立太子には同意しませんでした。

徳治3年（1308年）に後二条天皇が急逝すると、幕府は邦良親王が成長するまでの中継ぎとして、大覚寺統から天皇を選ぶことを認めましたが、それは恒明親王ではなく、当時の院政執行者であった後宇多上皇が推す尊治親王（後の後醍醐天皇）でした。この件で、後宇多上皇と対立した西園寺公衡は、上皇から出仕停止の処分を受けました。同時に、大覚寺統側からも政治的立場を疑われ、関東申次職を背景に朝廷内で力を持っていた西園寺家の政治的求心力は大きく損なわれました。

後宇多上皇は、亀山法皇の遺命を覆すことは不可能と考え、恒明親王が元服した後に持明院統と組んで皇位を求める事態を避ける必要がありました。そのため、いわゆる「文保の和談」を通じて、持明院統側と何らかの交渉を持とうとしたと考えられます。

文保2年（1318年）に後醍醐天皇（かつての尊治親王）が即位し、続いて邦良親王が立太子されると、恒明親王が元服したのは全てが終わった後のことでした。その後、二品に叙され、中務卿に任ぜられるなど、後醍醐天皇からは側近的な地位を与えられましたが、同時に警戒の対象でもあり続けました。嘉暦元年（1324年）に邦良親王が薨去した際には、大覚寺統内部で後継を巡る対立が生じ、最終的に持明院統の量仁親王（後の光厳天皇）が皇太子となりました。

それでも、後醍醐天皇は恒明親王との関係を維持し、建武政権成立後の元弘4年（1334年）には一品に叙しました。また、嫡男である全仁親王への親王宣下も後醍醐天皇によるものと考えられています。これは、後醍醐天皇が対立する邦良親王系や持明院統に対抗するために、恒明親王との関係を維持することが有利であると判断したためでしょう。

一方、持明院統側も、伏見法皇の正妃であった永福門院が昭訓門院の姉であることから、西園寺家との協力関係や大覚寺統との対抗関係を考慮して接近を図りました。後伏見・花園両院は、恒明親王や西園寺家の人々を招いて、和歌や漢詩、蹴鞠の催しを頻繁に開催しました。

後醍醐天皇が吉野へ移った後も、恒明親王は持明院統側の説得を受け、京都に留まりました。観応2年（1351年）9月6日に薨去。享年49。

系譜

父：亀山天皇
母：西園寺瑛子（昭訓門院） - 西園寺実兼の娘
妻：不詳

男子:
全仁親王（1320-1367）
尊守法親王
深勝（?-1400）
聖珍（聖助？）（?-1355）
尊信法親王（?-1380）
慈明
恒鎮法親王（?-1372）
恒助法親王
乗朝法親王（?-1407）
恒守法親王
仁誉法親王
桑朝法親王
尊観法親王？（1349-1400） - 時宗第12代遊行上人
杲尊（?-1399）

松薗斉は桑朝法親王の代わりに『本朝皇胤紹運録』には載っていないものの他の史料で実在を確認できる杲尊を上げた上で、深勝と杲尊は南朝で親王宣下を受けていたが、南北朝合一後に北朝がそれを否認した可能性を指摘します。

参考文献

『王朝時代の実像15 中世の王家と宮家』（臨川書店、2023年） ISBN 978-4-653-04715-5

関連項目

坂家宝剣 - 賜剣の儀に用いられた御剣

外部リンク

『親王・諸王略傳』恒 ［恒明］ - ウェイバックマシン（2019年1月1日アーカイブ分）

もう一度検索