幡枝八幡宮

幡枝八幡宮：平安時代の歴史と皇室の深い繋がりを持つ神社

由緒：大地鳴動と神託から始まった歴史

京都府京都市左京区岩倉に鎮座する幡枝八幡宮は、古くは王子山八幡宮と呼ばれていました。社伝によれば、宇多天皇の時代、894年（寛平6年）、新羅の侵攻の噂が流れていた頃、この地で大地鳴動が起こりました。この出来事をきっかけに、里人に神託が下され、皇都と人民の守護のため、この地に鎮座することが告げられたと伝えられています。

同時に、同じ夢を見てこの地を訪れようとしていた勅使と里人が出会います。彼らは共に地鳴りの中心地へと赴き、清水が湧き出ているのを発見しました。勅使は都へ帰り、天皇に報告。その山の頂上に新宮が造営され、男山石清水八幡宮を勧請して王子山八幡宮と名付けられました。

その後、「旗枝」は「八幡の枝分かれ」を意味する「幡枝」と呼ばれるようになり、王子山八幡宮も幡枝八幡宮と呼ばれるようになりました。地鳴りの中心から湧き出した清水は「石清水」と呼ばれ、約1000年間も湧き続けていましたが、近年の開発により消滅してしまいました。

皇室との深い繋がり：代々天皇からの崇敬

幡枝八幡宮は、皇室の勅願所として、代々の天皇から厚い崇敬を受け、多大な寄付を受けてきました。特に後水尾天皇（上皇）からは約7反歩の御神田など、数々の寄付がありました。桃園天皇や後桜町天皇からも祭具が献上され、現在も例祭で使用される菊の御紋入りの神輿などが残されています。社殿や神輿の修復の際にも、宮中から金銭の援助がありました。

貴重な神宝：歴史を語る数々の遺宝

幡枝八幡宮には、数多くの貴重な神宝が伝わっています。

御朱印状: 山城国愛宕郡幡枝村、王子山八幡宮に下された朱印状20通以上が、「三つ葉葵」の紋のついた木箱に納められています。徳川家との関係については不明です。
太刀「銘 肥前国近江忠吉」: 四代目近江大掾忠吉作。元禄時代に奉納されました。
御太刀「銘 藤原国広」: 名匠堀川国広作。国広が石清水の清水を用いて神前で鍛え、奉納した太刀で、後水尾天皇もその出来栄えを賞賛しました。現在は東京国立博物館に委託保存されています。
伝 足利義満奉納「無銘 鐔」: 足利義満の奉納と伝えられる鐔でしたが、明治時代に逸失しました。

摂末社：八幡宮を支える多くの神々

幡枝八幡宮には、多くの摂末社が鎮座しています。主な摂社には貴船神社があり、末社には若宮社、皇大神宮、春日神社、厄神社、野々宮社、愛宕社、上高良社、下高良社、琴比羅社、多賀社、稲荷社、天満宮、宇賀大社、白山社、針神社などがあります。それぞれの神様を祀り、様々な神事が行われています。

針神社と岩上社：独特の信仰と自然崇拝

境内には、針商の信仰を集める針神社があります。明治時代に現在の社殿が建立されました。創建時期は諸説ありますが、京都[[御所]]から移されたという説や、綾小路家の屋敷内にあったものが移されたという説などがあります。

また、八幡宮の鎮座する八幡山には、古来より山の神と水の神を祀る岩上社があります。その御神体は磐座であり、八幡宮の創建以前から信仰されていた「生土神」が祀られています。八幡山は円錐形で、古来より神奈備山であったと考えられています。

年中行事：地域の信仰と歴史を繋ぐ祭事

幡枝八幡宮では、例祭や針供養などの年中行事が行われています。例祭は4月15日とされていますが、近年は7月第1日曜日に行われるなど、必ずしも固定されていません。針供養は12月8日に行われます。

境内：歴史と自然が調和する空間

幡枝八幡宮の境内は、歴史と自然が調和した静謐な空間です。古くからの社殿や神宝、そして自然豊かな環境は、訪れる人に安らぎを与えてくれます。平安時代から続く歴史と、皇室との深い繋がりを持つ幡枝八幡宮は、日本の歴史と信仰を深く知る上で貴重な場所と言えるでしょう。

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