平和民主党

平民党：韓国民主主義の転換期を彩った政党

1987年、韓国の民主化運動が進む中、最大野党であった統一民主党内で大統領候補選出を巡る内紛が勃発しました。この分裂を機に、統一民主党の有力政治家であった金大中氏を中心としたグループが、新たな政党「平和民主党」（略称：平民党）を結成しました。

平民党の結成は、金大中氏の政治的決断によって一気に進められました。統一民主党内の金大中派議員を中心に、短期間で結党準備委員会が発足、創立大会を経て、金大中氏が党総裁兼大統領候補に選出されました。1987年12月の大統領選挙では「平民は平民党、大衆は金大中」のスローガンを掲げ、選挙戦を展開しましたが、惜しくも3位に終わりました。当選者は民主正義党の盧泰愚氏でした。

しかし、1988年4月に行われた第13代国会議員選挙では、平民党は躍進し、第2党の地位を獲得しました。この結果、韓国政治における主要政党の一つとして確固たる地位を築いたのです。韓国の政界において、平民党は無視できない存在となっていました。

しかし、1990年、与党の民主正義党が野党勢力と統合して巨大与党「民主自由党」を結成したことで、平民党は勢力を大きく減らすことになります。少数派となった平民党は、その後、「新民主連合」との統合を経て「新民主連合党」を結成しますが、地方選挙では惨敗を喫します。この敗北を受け、平民党は、当時第2野党であった民主党（統一民主党の残留勢力）との統合を模索し、1990年9月10日、両党は統合して「民主党」を結成しました。この「民主党」は、現在の与党である共に民主党へとつながる系譜を有しています。

平民党の綱領は、民主主義理念に基づいた真の民主政府の樹立、中小企業主、労働者、農民の利益擁護、経済の公正な分配、軍隊の中立性、自主外交、そして段階的な平和的な統一政策などを掲げていました。

平民党は、全羅道地域に強い支持基盤を持っていました。金大中氏の出身地であるこの地域では、平民党は圧倒的な支持を得ていました。しかし、全羅道以外の地域では、民主自由党などの勢力が強く、平民党は苦戦を強いられました。

平民党の歴史は、韓国の民主化と政党政治の変遷を象徴するものでした。短命に終わった政党ではありましたが、金大中政権、盧武鉉政権、そして文在寅政権といった、韓国の現代史における重要な政権とつながる重要な役割を果たしました。平民党の政治的遺産は、現在も韓国の政治に影響を与え続けていると言えるでしょう。

平民党の主要政策

民主主義の深化: 真の民主主義に基づいた政府の樹立を目指しました。
経済正義: 中小企業、労働者、農民といった弱者層の利益を代弁し、富の公正な分配を追求しました。
外交: 自主的な外交政策を推進し、非同盟国家との関係強化を図りました。
平和的な統一: 韓国の平和的な統一を段階的に進めていく政策を提唱しました。

平民党の系譜

平民党は、直接的には短命に終わりましたが、その後の韓国の政党政治に大きな影響を与えました。特に、金大中氏の率いる勢力は、その後、新政治国民会議、新千年民主党、大統合民主新党といった政党を経て、現在の与党である共に民主党へとつながっています。平民党の精神と政策は、現代韓国の政治においても重要な要素として受け継がれていると言えるでしょう。

参考文献

中央選挙管理委員会『大韓民國政黨史』第3輯（1980～1987）
金容権編著『韓国近現代史事典　1945～2004』（日本評論社）
* アジア経済研究所編『アジア動向年報』（アジア経済研究所）

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