平岡照章

平岡 照章

平岡 照章（ひらおか てるあき）は、大正から平成にかけて活躍した日本の作曲家です。本名は平岡 光之（ひらおか てるゆき）。1907年（明治40年）5月2日に東京に生まれ、1992年（平成4年）6月9日に85歳でその生涯を終えました。

経歴

東京で生まれた平岡照章は、法政大学を中退後、音楽の道を歩み始めました。日本の音楽業界において、様々な立場でその才能を発揮します。キングレコードやコロンビアレコードといった大手レコード会社では専属作曲家として数々の作品を生み出し、東宝演劇本部では音楽部長を務め、舞台音楽の世界でもその手腕を振るいました。その後も日本ビクターレコードの専属作曲家、そしてNHKの契約作曲家として活動するなど、そのキャリアは多岐にわたり、幅広いジャンルで日本の音楽文化の発展に貢献しました。

主な業績と評価

平岡照章は、特に童謡の分野で多くの人々に親しまれる楽曲を残しました。「童謡の作曲家」としての側面が強く、子どもたちの心に寄り添う温かいメロディーを数多く生み出しています。彼の音楽的な才能は高く評価されており、1936年（昭和11年）に行われた第5回日本音楽コンクールの作曲部門で第3位に入賞を果たしました。さらに翌年の1937年（昭和12年）には、その功績が認められ、内閣総理大臣賞を受賞しています。これらの受賞は、当時の音楽界における彼の地位と影響力の大きさを物語っています。

作品

作曲活動においては、童謡を中心に、校歌やその他の楽曲を幅広く手がけました。代表的な童謡としては、坂口淳との共作が多い「子鹿のバンビ」、「赤ちゃんはいいな」、「ばあやのお里」、「花時計の歌」、「ママのおひざ」、「赤いリボン」などがあります。また、自身で作詞も手がけた「パパのうた」、宮沢章二作詞の「光の馬車」、時雨音羽作詞の「ぴょんぴょん虫」、まど・みちお作詞の「ひなまつりのうた」や「おうちの赤ちゃん日本一」なども知られています。

教育分野にも深く関わり、全国各地の小中学校や高校、保育園の校歌・園歌を多数作曲しています。草野心平作詞の「東京電機大学校歌」、巽聖歌作詞による多くの校歌（紫波町立紫波第一中学校、紫波町立日詰小学校、八王子市立浅川中学校など）、斎藤信夫作詞の習志野市立大久保東小学校・袖ケ浦西小学校校歌など、その数は多岐にわたります。これらの校歌は、それぞれの学校の歴史や地域性を踏まえつつ、子どもたちや生徒たちが誇りを持って歌えるような、力強くも親しみやすいメロディーが特徴です。

作曲活動に加え、平岡照章は編曲家としても活動しました。北原白秋作詞、中山晋平作曲の「砂山」や、海野厚作詞、中山晋平作曲の「背くらべ」といった著名な童謡の編曲も手がけています。また、音楽教育に関する著書として、『音樂家になるには』や『小学校教員検定受験用音楽科精説』を出版し、音楽を目指す人々への指南や教員育成にも力を注ぎました。さらに、『くるみ童謡百曲集』や『小学生の合唱全集』といった楽譜集の編集にも携わり、後世に質の高い音楽作品を伝える役割も担いました。

多方面にわたる活動を通じて、日本の音楽界、特に童謡や学校唱歌の分野に確固たる足跡を残した作曲家、平岡照章は、1992年に85歳で永眠しました。その作品は、今なお多くの人々に歌い継がれています。

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