平教経

平教経（たいらの のりつね）

平教経は、平安時代末期の武将で、平家一門の重鎮である平教盛の次男として生まれました。初名は国盛といい、平清盛の甥にあたります。

『平家物語』における教経

『平家物語』では、平家随一の猛将として描かれており、数々の合戦で目覚ましい武功を挙げたとされています。特に、源義経とは好敵手として対比され、「たびたびの合戦で一度の不覚も取ったことはない」「王城一の強弓精兵」と称されるほどの武勇を誇りました。

都落ち後、平家が劣勢となる中でも、教経は水島の戦い、六ヶ度合戦、屋島の戦いなどで奮戦し、源氏を大いに苦しめました。最後の壇ノ浦の戦いでは、敗戦濃厚な状況下でも果敢に戦い続け、義経に組みかかろうとしましたが、八艘飛びで逃れられ、最終的には大男二人を抱えて海に身を投じて壮絶な最期を遂げたと語られています。

『吾妻鏡』など他の史料における教経

しかし、『吾妻鏡』では、教経は目立った活躍を見せる武将としては描かれておらず、一ノ谷の戦いで甲斐源氏の一族である安田義定の軍に討ち取られ、その首が京都で獄門にかけられたと記録されています。一方で、『玉葉』や『醍醐雑事記』などの史料には、一ノ谷の戦いでの生存説が記されており、教経の実像については不明な点が多く残されています。

生涯

教経の生涯は、主に軍記物語である『平家物語』によって語られています。ただし、『平家物語』は物語としての側面が強く、必ずしも史実を正確に伝えているとは限りません。

都落ちと水島の戦い

治承3年（1179年）に能登守に任官しますが、実際に北陸の戦いには参戦していません。寿永2年（1183年）には、倶利伽羅峠の戦いと篠原の戦いで源義仲に連敗した平家が京の守りを固める際、兄の通盛とともに2000余騎を率いて宇治橋を警護しました。その後、平家は都落ちし、教経もこれに従いました。

同年閏10月、義仲が讃岐国屋島の平家本営を攻略しようと足利義清を派遣しますが、備中国水島で平家軍と衝突しました。平知盛・重衡、通盛・教経らが率いる平氏軍は、船を連結して平坦にして馬で攻め込む戦法で源氏軍を圧倒し、海野幸広や足利義長を討ち取り、足利義清は自害しました。この水島の戦いでの平家の大勝により、義仲の平家追討は頓挫しました。

六ヶ度合戦

寿永2年（1183年）、平家は福原まで再進出しますが、西国各地で平家への反乱が相次ぎました。教経は、四国や瀬戸内海沿岸で発生した反乱鎮圧のために転戦し、淡路島の源氏勢力を討ち、伊予の河野通信を攻撃し、安摩忠景や園辺忠康を撃破しました。さらに、豊後国の臼杵惟隆・緒方惟義兄弟が籠城する今木城を攻め落とすなど、各地で武功を上げました。これらの戦いを「六ヶ度合戦」と呼びます。

一ノ谷の戦いと討死？

寿永3年（1184年）2月、源範頼・義経が福原に進軍すると、教経は兄の通盛とともに山の手を守備しました。しかし、2月7日の一ノ谷の戦いで平家は大敗し、多くの将兵を失いました。通盛や弟の業盛はこの戦で討ち死にしました。『吾妻鏡』では教経もこの戦いで討たれたとされていますが、『玉葉』には生存説を示す記述もあり、その後の消息は不明確です。

屋島・壇ノ浦の戦い

元暦2年（1185年）2月、義経は屋島に奇襲をかけました。教経は軽装で奮戦し、多くの敵を射落としましたが、佐藤継信を討ち取った際に、童の菊王丸が討たれたことを悼んで戦をやめました。

平家は屋島を放棄し、長門国彦島へ逃れ、3月24日に壇ノ浦で源氏との最後の決戦に臨みました。序盤は平家が優勢でしたが、潮の流れが変わり、義経の奇策もあって平家は敗北しました。

最期

壇ノ浦の戦いで平家滅亡が決定的な状況になっても、教経はなおも戦い続けました。矢が尽きると大太刀を振るい、義経を探して舟を渡り歩きましたが、義経は八艘飛びで逃げました。教経は、自らを生け捕りにしようと襲いかかった安芸太郎・次郎兄弟を抱え、海に飛び込んで自害しました。

生存説

平家物語では壇ノ浦で死んだとされている教経ですが、徳島県祖谷地方には、教経が壇ノ浦を脱出し、祖谷に落ち延びて没したという伝説が残っています。

関連作品

漫画やテレビドラマなど、教経を題材とした作品も存在します。

関連項目

平家物語、屋島の戦い、壇ノ浦の戦い、平家の落人

もう一度検索