篠原の戦い

篠原の戦いとは

篠原の戦いは、寿永2年（1183年）6月1日に、加賀国篠原（現在の石川県加賀市旧篠原村地区）で繰り広げられた源義仲軍と平氏軍との戦いです。この戦いは、平安時代末期の治承・寿永の乱における重要な戦闘の一つであり、源氏と平氏の勢力図を大きく変える転換点となりました。

戦闘の経緯

倶利伽羅峠の戦いで大敗を喫した平維盛率いる平氏軍は、京を目指して北陸道を南下し、加賀国篠原に陣を敷きました。平氏軍は、ここで兵馬を休ませようとしましたが、源義仲軍はそれを許さず、篠原で平氏軍に襲いかかりました。

『平家物語』によると、源義仲軍の兵力は5000騎に満たなかったのに対し、平氏軍は4万騎という大軍でした。しかし、戦いの結果は、平氏軍の惨敗に終わりました。平氏軍は、合戦後、甲冑を付けた武士がわずか4,5騎しか残っておらず、過半数が死傷し、残りの兵は武具を捨てて山林に逃亡しましたが、そのほとんどが討ち取られました。平家一門の平知度が戦死し、平氏軍の侍大将である平盛俊、藤原景家、忠経らは、供もなく逃げ去りました。この大敗の原因は、侍大将同士や大将軍である平維盛らの内輪もめによるものだと伝えられています。

この戦いで、平氏軍はほぼ戦闘能力を失い、壊滅的な状態となりました。一方、源義仲軍は圧倒的な勝利を収めました。

斎藤実盛の奮戦

『平家物語』の「篠原」と「実盛」の章段には、平氏軍の老将である斎藤実盛が、自軍が総崩れとなる中で殿（しんがり）を務め、奮戦する姿が描かれています。実盛は、かつて源義仲の父である源義賢が大蔵合戦で討たれた際、幼い義仲を木曾へ逃がした恩人でした。この実盛の逸話は、能の演目「実盛」としても知られています。

戦後の影響

篠原の戦いの後、敗れた平氏軍は出陣時の半数ほどの兵力で京へ帰還しました。一方、源義仲は勢いに乗り、越前、近江へと進軍しました。義仲軍が近江に到着したという知らせが京に届いた頃、鎮西反乱を鎮圧した平家の家人である平貞能が帰京しましたが、期待された数万の軍勢ではなく、わずか1000騎程度であり、人々を落胆させました。

源義仲は、6月に都への最後の関門である延暦寺と交渉し、7月には京に入京を果たしました。その直前に、平氏一門は京を離れ、西方へ逃れていきました。

関連事項

首洗池: 加賀市手塚町にある池で、樋口次郎兼光が討ち取った斎藤別当実盛の首を洗ったと伝えられています。
斎藤実盛: 平氏軍の老将で、篠原の戦いで壮絶な最期を遂げました。
* 栢野大杉: 篠原の戦いに関する逸話が残る大杉です。

篠原の戦いは、源氏の勢力拡大と平氏の衰退を決定づける重要な戦いであり、その後の歴史に大きな影響を与えました。

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