平松家:栄華を極めた公家・華族の系譜
平松家は、桓武
平氏西洞院流を祖とする名門で、
江戸時代初期に西洞院時慶の次男、時庸によって創設されました。
近江国平松村を領地としたことから、その地名は家名となりました。
公家としての家格は名家に属し、
華族制度成立後は
子爵位を授けられました。
輝かしい歴史と朝廷での活躍
平松家は代々、朝廷において重要な役割を担いました。
江戸時代には200石の家禄を有し、
近衛家の家礼として仕えました。歴代当主の多くは、
正二位権
中納言に叙せられ、右衛門督を務めたほか、
議奏、院伝奏、日光例幣使などの要職にも就く者もいました。特に、
江戸時代後期には平松時章が
正二位権
大納言に昇進するなど、高い地位に就いた人物も存在しました。
平松家は「日記之家」として知られ、朝廷や社会に関する貴重な記録を数多く残しています。特に、2代当主時量は近衛基煕と親交が深く、基煕の娘である近衛煕子が甲府徳川家の徳川綱豊(後の6代将軍徳川家宣)と結婚した際には、形式的に煕子を養女に迎えました。その際に、平松家の遠祖である平信範の日記『兵範記』の一部を基煕から譲り受けたことは有名です。
3代当主時方は、野宮定基らと共に
有職故実に精通した人物として知られ、「有職四天王」の一人に数えられました。朝廷では
近衛家と島津家とのパイプ役を務めるなど、島津家や
薩摩藩との関係も深いものでした。さらに、平松家の女性たちは将軍家に仕える
上臈として活躍し、朝廷と将軍家の間を繋ぐ重要な役割を果たしました。
戊辰戦争においては、平松時厚が仁和寺宮嘉彰親王に随行し、戦功により
賞典禄50石を与えられました。
明治維新後、
華族制度が成立すると、平松家は
子爵家として認められました。時厚はその後、宮内省、内務省、司法省などに勤務し、元老院議官を経て貴族院議員を務めるなど、政治にも関与しました。また、
華族有志による日本最初の政治結社「通款社」の発起にも参加しています。
文化への貢献と貴重な遺産
平松家は、朝廷関係の記録文書や国文学の写本を数多く所有しており、これらは現在、
京都大学附属図書館に「平松文庫」として所蔵されています。中でも、遠祖平信範の日記である『兵範記』『範国記』『知信記』は
重要文化財に指定されています。これらの資料は、古典文学研究においても重要な底本となっています。また、江戸・
明治時代の
公家華族資料2076点は、
国文学研究資料館に「
山城国京都平松家文書」として保管されています。
系譜とその後
平松家の系譜は、数々の著名な人物を輩出し、その歴史は長く栄華を極めました。子孫は陸軍軍人や芸術家など、様々な分野で活躍しました。昭和前期には、
東京市渋谷区原宿に邸宅を構えていました。平松家が遺した膨大な資料群は、日本の歴史と文化を理解する上で貴重な資源であり、その功績は後世に長く語り継がれるでしょう。 平松家の歴史は、単なる貴族家の歴史にとどまらず、日本の歴史、文化、政治に深く関わる重要なものであり、その存在は日本の歴史研究においても重要な位置を占めていると言えるでしょう。