平松時厚

平松時厚：幕末維新から明治期を駆け抜けた稀代の官僚

平松時厚（ひらまつ ときあつ）は、幕末期の公家の子として生まれ、明治時代には官僚や検察官として華々しいキャリアを築いた人物です。新潟県令、元老院議官、貴族院子爵議員、錦鶏間祗候など要職を歴任し、従二位勲三等子爵に叙せられました。平松家13代当主としての役割も担い、その生涯は激動の時代を生き抜いた証と言えるでしょう。

若き日の活躍と戊辰戦争

少納言・平松時言を父に持つ平松時厚は、安政2年（1855年）に元服し、昇殿を許されると甲斐権介に任じられました。しかし、元治元年（1864年）、禁門の変において長州藩に加担したことから参朝停止などの処分を受けます。その後、慶応3年（1867年）に赦免されるまで、謹慎生活を送ることになります。

戊辰戦争では、慶応4年（1868年）に征討将軍仁和寺宮嘉彰親王に随行して大坂へ出陣。軍事書記役や軍監を務め、その手腕を発揮しました。戦後には、軍防事務局親兵掛、弁事、三河国裁判所総督、三河国兼遠江国鎮撫使などを歴任し、政府軍の慰労のため東下するなど、新政府における重要な役割を担いました。明治元年（1868年）には権弁事に就任し、岩代国巡察使や民部官副知事心得を歴任するなど、その活躍は目覚ましいものがありました。戊辰戦争での功績により、明治2年（1869年）には賞典禄50石を永世下賜されています。同年に宮内権大丞にも就任し、政府の中枢で活躍しました。

新潟県令と悌輔騒動

明治3年（1870年）、平松時厚は新潟県知事に就任します。明治4年（1871年）には第三次新潟県が成立し、初代県令として着任。新政府の政策推進に尽力しましたが、大河津分水掘削工事の負担を巡り、農民による悌輔騒動が発生。この騒動の責任を取るかたちで、明治5年（1872年）に県令を免職されました。この経験は、彼の行政官としての力量を試す大きな出来事となりました。

華族としての晩年

新潟県令を辞任後も、平松時厚の官僚としてのキャリアは続きます。宮内省御用掛、太政官内務部勤務、内務省御用掛など様々な役職を歴任し、東京府麹町区長、司法省御用掛、検事、さらには東京控訴裁判所詰、大阪始審裁判所詰、大阪控訴院詰、長崎控訴院詰など、検察官として全国各地で活躍しました。明治14年（1884年）には子爵に叙爵され、華族の仲間入りを果たします。

明治23年（1890年）には元老院議官に就任。元老院廃止後も錦鶏間祗候に任じられ、同年には貴族院議員補欠選挙に当選し、死去するまで貴族院子爵議員として活躍しました。

家族と栄典

平松時厚の長男・時陽は爵位を継承し、陸軍騎兵大尉となりました。娘達子、尊覺、速子もそれぞれ名家と縁を結びました。弟の小松行正の娘2人を養女として迎え入れるなど、家族を大切にしながら公職に尽力した様子が伺えます。また、明治39年（1906年）には旭日小綬章を受章しています。

平松時厚の墓所は青山梅窓院にあります。彼の生涯は、激動の時代を生き抜き、官僚・検察官として大きな功績を残した人物像を物語っています。数々の重要なポストを歴任し、戊辰戦争や新潟県令時代には様々な経験を積んだ彼の生き様は、現代においても学ぶべき点が多いと言えるでしょう。様々な史料を基に、彼の生涯を多角的に検証することで、幕末維新から明治という激動期を生き抜いた、稀有な官僚像が見えてくることでしょう。

もう一度検索