平野長泰

平野長泰（ひらの ながやす）

平野長泰は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将で、江戸幕府の旗本です。特に、賤ヶ岳の戦いでの功績により「賤ヶ岳の七本槍」の一人として知られています。

出自

平野氏は、桓武平氏の流れを汲む北条氏の庶流である横井氏の分家とされています。尾張国海東郡津島に住み、中島郡平野村を領有したことから、その村名を姓としました。しかし、長泰の父である平野長治は、もとは船橋右京進枝賢と名乗り、清原業賢（または宣賢）の子とされています。長治は、北条氏康の家臣であった平野萬久入道の養子となったため、長泰自身は北条氏の血筋ではなく、清原氏（舟橋氏）の末裔という説が有力です。

生涯

永禄2年（1559年）、長泰は平野長治の三男として生まれ、幼名は権平、初めは長勝と名乗りました。天正7年（1579年）には、父と同じく羽柴秀吉に仕えるようになります。

天正10年（1582年）の本能寺の変後、秀吉と柴田勝家が対立し、天正11年（1583年）の賤ヶ岳の戦いで長泰は福島正則、片桐且元らと共に、抜群の働きを見せました。この功績により、長泰は一番槍の功名を称えられ、「賤ヶ岳の七本槍」の一人として数えられることとなります。長泰はこの戦功により、河内国で3千石の知行を与えられました。

天正12年（1584年）の小牧・長久手の戦いでは、長久手での羽柴秀次の敗走時に、敵に果敢に突撃して首級を挙げ、二重堀砦の戦いでも奮闘しました。文禄4年（1595年）には、2千石を加増され、大和国十市郡田原本周辺の七ヶ村で、合計5千石を領有しました。この加増は、賤ヶ岳の戦いでの功績が再び評価されたためとされています。

慶長3年（1597年）3月15日には、豊臣姓を下賜され、従五位下遠江守に任官されました。秀吉の死後は、徳川家康に仕え、慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いでは東軍に属しました。徳川秀忠に従い中山道隊に加わりましたが、秀忠隊が関ヶ原の本戦に間に合わなかったため、長泰自身は目立った手柄を立てることはできませんでした。

その後も秀忠に仕え、慶長17年（1612年）には二条城の御殿普請に貢献し、その功績を賞されました。慶長19年（1614年）の大坂の陣では、福島正則のように旧恩に報いるため豊臣方に加勢しようと奔走し、家康に大坂城入城を直訴しましたが許されず、江戸留守居役を命じられました。以後は、江戸幕府の大身旗本として、秀忠の安西衆の一人として取り立てられ、三代将軍家光の時代まで長生きしました。

寛永5年（1628年）、長泰は70歳でこの世を去りました。

子孫

長泰の子孫は、大身旗本として交代寄合となり、江戸城での席も柳間詰で大名に準ずる扱いを受けました。子の長勝の代で長泰の血統は途絶えましたが、徳川家綱の命により、家綱の生母の異母弟である長政が養子に入りました。その後も養子を迎えながら、旗本平野家は9代続き、領地の移動もなく明治維新まで存続しました。明治新政府による高直しで大名となり、田原本藩を立藩しました。

関連作品

小説
『権平五千石』 司馬遼太郎（『週刊新潮』1965年1月11日増大号、『侍はこわい』所収）
『平野遠江守長泰』 徳永真一郎（『賤ヶ岳七本槍 秀吉を支えた勇将たちの生涯』所収）

脚注

注釈


出典


参考文献
桑田忠親『太閤家臣団』新人物往来社、1971年、151-152頁。
高柳光寿; 松平年一『戦国人名辞典』吉川弘文館、1981年、205頁。
堀田正敦『国立国会図書館デジタルコレクション 寛政重脩諸家譜. 第3輯』國民圖書、1923年、715-716頁。

外部リンク

平野氏系譜

もう一度検索