広岡宇一郎

広岡宇一郎

広岡宇一郎（ひろおか ういちろう）は、1867年（慶応3年）に生まれ、1941年（昭和16年）に没した、日本の政治家、弁護士です。衆議院議員として活躍し、立憲政友会、政友本党、そして再び立憲政友会へと所属を変えながら、激動の時代を駆け抜けました。

生い立ちと自由党での活動

広岡宇一郎は、淡路国三原郡市村（現在の兵庫県南あわじ市）で生まれました。22歳の時に自由党に入党し、機関紙の記者として活動を始めます。しかし、その活動は決して平坦なものではありませんでした。新聞紙条例や集会条例違反を理由に、度重なる弾圧を受け、6回にわたって拘束されるという苦難を経験します。1891年（明治24年）には、明石町で発生した官民の対立事件で、5千人の民衆を率いて6百名の巡査隊と衝突するという事件を起こし、兇徒嘯集罪で1年2ヶ月の間、獄中で過ごすことになりました。この事件は、広岡の強い正義感と行動力を示すエピソードとして知られています。

弁護士としての活動と政界への進出

出獄後、広岡は東京へ移り、自由党の活動を続けながら、日本法律学校（現在の日本大学）で法律を学びました。卒業後、弁護士試験に合格し、東京で弁護士事務所を開業します。弁護士としての活動を通して、社会の不条理と対峙する中で、政治への関心を深めていったと考えられます。

1915年（大正4年）、広岡は第12回[[衆議院議員総選挙]]に立憲政友会から出馬し、見事当選を果たします。政界入りを果たした広岡は、政友会の幹事長を務め、その手腕を発揮しました。特に1921年（大正10年）には、憲政会総裁であった加藤高明が、普通選挙に反対していた船成金の内田信也から献金を受けていた事実を追及した「珍品五個事件」は、政界の腐敗を暴く事件として大きな注目を集めました。

政友会の分裂と復帰

1924年（大正13年）に立憲政友会が分裂すると、広岡は政友本党に所属しました。しかし、1927年（昭和2年）に憲政会との合同に反対し、再び立憲政友会に復帰するという、複雑な政治的立場を経験します。この背景には、広岡の政治に対する強い信念と、政党の変遷の中で自身の立場を模索する姿が見て取れます。政友会復帰後は、田中義一内閣で逓信政務次官を務め、その行政手腕を活かしました。

広岡宇一郎の生涯は、自由民権運動から政界での活躍まで、激動の時代を生き抜いた政治家の軌跡であり、その弁護士としての経験と正義感が、政治活動にも大きな影響を与えたと言えるでしょう。

参考文献

『明治弁護士列伝』周弘社、1898年。
篠田皇民著『伝家之宝典 自治団体之沿革 兵庫県之部』東京都民新聞社地方自治調査会、1932年。

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