府内 (豊後国)

府内（ふない）

府内は、現在の大分市中心部にあたる場所の、明治初期までの旧称です。かつては豊後国の国府が置かれ、府内藩の藩庁である府内城を中心とした城下町として発展しました。

古代・中世

古代には、豊後国の国府は現在の大分市中心部よりやや南の大分川沿い（現在の古国府付近）にあったと推測されています。鎌倉時代に入ると、大友氏が豊後国守護に任じられ、3代当主の大友頼泰が豊後国に下向して土着しました。この頃、府内は「府中」と呼ばれていました。1242年には、頼泰が府中に新御成敗状を発布し、商業活動が盛んであったことがうかがえます。

大友氏の居館跡である上原館は、現在の大分市中心部南側に広がる上野丘陵の北部に位置し、土塁や堀の跡が残っています。この館は、鎌倉時代後期に7代当主の大友氏泰によって築かれたという説がありますが、諸説あります。上原館は、1597年の府内城築城まで存続していたとされています。

1990年代後半からの調査で、上野丘陵北東の平地部で大規模な居館跡（大友氏館跡）が発見されました。この遺跡からは、15世紀から16世紀にかけての庭園遺構や掘立柱建物跡などが見つかっており、大友氏館は一辺約200メートルの守護館であったと推定されています。当時、府内は、大分川の左岸河口に位置していました。

上原館の北東、大友氏館の南東の大分川沿い（現在の元町）には、大友氏の菩提寺である万寿寺がありました。この寺は、1306年に5代当主の大友貞親によって建立された臨済宗の寺院で、天下十刹にも列せられた大寺院でした。大友氏館跡と万寿寺跡は、大友氏遺跡として国の史跡に指定されています。

戦国時代

戦国時代には、21代当主の大友義鎮（宗麟）が九州北・中部6ヶ国の守護職と九州探題を兼ね、府内はその本拠地として繁栄を極めました。当時の府内は、東西約0.7キロメートル、南北約2.2キロメートルに及び、東西に4本、南北に3本の大路が走っていたと推定されています。

宗麟はキリスト教を保護し、明や南蛮との貿易を盛んに行ったため、府内は国際貿易港として栄え、南蛮文化が花開きました。1555年には育児院、1557年には日本初の西洋式病院が開設され、1580年にはコレジオ（神学院）も設置されました。大友氏館の西側にはイエズス会の教会があり、現在の顕徳町の地名はこの教会に由来するとされています。

宗麟は1557年頃から臼杵の丹生島城に居住地を移しましたが、府内には経済的・文化的な機能が残されていました。1586年には、当時の府内には約5千もの家屋があり、数万人の人口があったと推測されています。

しかし、1586年の島津家久の侵攻により、府内は焼失したとされています。大友氏遺跡から出土した陶磁器には炎熱の痕が認められ、この記述を裏付けています。

近世

大友氏改易後、豊後国は複数の藩に分封されました。1597年に府内に封じられた福原直高は府内城の築城を開始し、その後、竹中重利が2万石を封じられて府内藩が成立しました。重利は城の大規模な改修を行い、1607年に府内城が完成しました。

江戸時代の府内は、府内藩2万石の城下町として存続しましたが、中心部の人口は3～5千人程度にとどまりました。1710年には、5町で5,591人、町組で14,096人の人口がありましたが、1780年には5町で4,049人、1805年には3,722人に減少しています。

近代

明治時代になると、1871年の廃藩置県により府内藩は府内県となりましたが、その後大分県に再編されました。1872年には、大分県の県庁が大分郡勢家町（現在の大分市都町）に置かれました。1875年には、府内町、松末町、千手堂町、笠和町、同慈寺町、南勢家町の七町が大分町として統合されました。1889年の町村制施行により、府内の名は公式な地名から姿を消しました。

現在では、府内町という町名や、府内五番街商店街、大分駅府内中央口(北口)などに、その名残をとどめています。

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