南宗

南宗(なんしゅう)とは



南宗は、中国における禅宗仏教の一派です。代に神会(じんえ)が、自身の師である慧能(えのう)の教えを正統なものと主張し、それに対して、当時の主流であった神秀(じんしゅう)とその弟子たちの教えを「北宗」と批判したことから始まりました。神会は、自らの立場を「南宗」と称し、悟りは段階的な修行によってではなく、瞬時に得られるとする「頓悟」の立場を主張しました。

歴史



則天武后に迎えられ、帝室の尊崇を受けていた神秀は、その弟子たちも官人の支持を得ていました。神会は、これらの侶たちを「北宗」と呼び、公然と非難しました。彼は洛陽の荷沢寺に入り、北宗批判を続けました。神会は、真の仏法を伝えるのは、禅宗六祖である慧能であるとし、同じく六祖とされていた神秀を批判しました。慧能が南方で法を伝えていたことから、神会は自らの立場を「南宗」と称しました。

神会の活動は、一時政府の命により洛陽を追放される事態となりましたが、755年に発生した安禄山の乱で香水銭制度に加担したことで洛陽に復帰しました。その後、神会は精力的に布教活動を行い、多くの人々の支持を集めました。神会の南宗は、彼が荷沢寺を拠点としていたことから「荷沢宗」とも呼ばれ、隆盛しました。しかし、神会の死後、南宗は急速に衰退し、845年の会昌の廃仏によって北宗と共に歴史から姿を消しました。

南北両宗の対立と盛衰は、後の禅宗に大きな影響を与え続けました。

禅宗の発展と南宗の影響



中国禅宗においては、六祖慧能の法を継いだ禅たちが活躍し、代から宋代にかけて「五家七宗」と呼ばれる主要な各派を形成し、中国仏教は大いに栄えました。慧能と南北宗論については、『六祖壇経』などを通して伝えられ、後代の禅たちは、自らの系統を南宗の系統であると認識し続けてきました。その意味で、荷沢宗は滅び去りましたが、南宗の教えは現代にまで続いていると言えます。

南宗の特徴



南宗の教えの中心は「頓悟」です。神会は、悟りという目標に向かって段階的に修行の階梯を登っていく禅法である「漸悟」を批判しました。彼は、無明と悟り、凡夫と仏といった二元性を超越して、禅定(瞑想)そのものが悟りであると主張しました。この「頓悟」の立場は、南宗の教えの核となります。

しかし、近年の敦煌文献の研究により、神会自身も坐禅をするための準備期間が必要であることを認めるなど、極端な立場ではなかったことが明らかになっています。これは、南宗の教えが、必ずしも急進的なものではなく、現実的な側面も持っていたことを示唆しています。

南宗は、その後の禅宗の発展に大きな影響を与え、その教えは現代の禅にも受け継がれています。

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