張燕

張燕（ちょうえん）

張燕（ちょう えん、生没年不詳）は、後漢末期の武将であり、黒山賊（こくさんぞく）と呼ばれる大規模な盗賊団を率いたことで知られています。元の名は褚燕（ちょえん）といい、字（あざな）は飛燕（ひえん）です。彼は冀州常山郡真定県（きしゅうじょうざんぐんしんじょうけん）の出身で、息子に張方（ちょうほう）、孫に張融（ちょうゆう）、曾孫に張林（ちょうりん）がいます。

生涯

黒山賊の頭領として

後漢末期の混乱期、黄巾の乱が勃発すると、張燕は張牛角（ちょうぎゅうかく）と共に盗賊団を結成し、各地で略奪や破壊行為を繰り返しました。張牛角の死後、張燕はその後を継いで頭目となり、張姓に改めました。彼の率いる黒山賊は、山賊や罪人など、その数100万に及ぶ大集団でした。

後漢朝廷は、幾度となく黒山賊を鎮圧しようと試みましたが、その度に失敗に終わりました。そこで、張燕は自ら朝廷に帰順することで忠誠心を示す道を選びました。この行動が評価され、彼は平難中郎将（へいなんちゅうろうしょう）に任命され、孝廉（こうれん）を推挙する資格を与えられました。これは事実上、彼の支配権が容認されたことを意味します。

反董卓連合への参加と袁紹との戦い

董卓（とうたく）が後漢の実権を握ると、張燕は反董卓連合軍に参加し、董卓打倒を目指しました。その後、公孫瓚（こうそんさん）と手を結び、袁紹（えんしょう）と対立しましたが、袁紹配下の呂布（りょふ）との戦いに敗れ、軍勢は離散してしまいました。

曹操への降伏と晩年

官渡の戦い（かんとのたたかい）から2年後、袁紹が死去し、袁氏の勢力が衰退すると、張燕は曹操（そうそう）に降伏しました。この時、彼は平北将軍（へいほくしょうぐん）の位を与えられています。

張燕は、軍を率いる際に常に迅速な動きを見せたため、「飛燕」という異名で呼ばれていました。

子孫

張燕の曾孫である張林（ちょうりん）は、西晋（せいしん）に仕え、八王の乱（はちおうのらん）の際には趙王司馬倫（ちょうおうしばりん）の簒奪に加担しました。しかし、間もなく内紛によって誅殺されています。

なお、西晋の巴西郡太守（はせいぐんたいしゅ）に同名の人物がいますが、これは別人です。また、八王の乱の際に名が見られる張方も、張燕の子である張方とは別人です。

張燕は、後漢末期の動乱期に、独自の勢力を築き上げた人物として、歴史に名を残しています。

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