司馬倫

司馬倫：簒奪者として名を残した西晋の皇族

司馬倫（しば りん）は、西晋の皇族であり、八王の乱の主要人物の一人です。彼は司馬懿の九男として生まれ、一時的に帝位を簒奪しましたが、正史『晋書』において皇帝としての扱いを受けていません。

生涯

若き日

司馬倫は、司馬懿が晩年に寵愛した柏夫人を母に持ちます。司馬氏が魏の実権を握ると、彼は爵位を与えられ、安楽亭侯に封じられました。西晋建国後、琅邪王に封じられます。しかし、琅邪王時代には御裘を盗もうとした事件を起こし、免罪されるものの、その素行には問題がありました。

関中を乱す

恵帝の時代に関中の守備を任されますが、司馬倫の不公平な刑罰が氐族・羌族の反乱を招きます。彼は雍州刺史解系と共に鎮圧に当たりますが、側近の孫秀を重用するあまり、解系と対立。朝廷は司馬倫を更迭し、洛陽に召喚します。

洛陽へ帰還、そして簒奪の野望

洛陽に帰還後、司馬倫は賈氏一派に取り入り、権勢を拡大します。しかし、張華らの反対により、要職を得ることはできませんでした。賈南風が皇太子司馬遹を廃位すると、司馬倫は当初、皇太子の復位を画策しますが、孫秀の進言により、賈南風が皇太子を殺害するのを待ち、その後に賈氏一派を粛清するという策略に出ます。

賈氏一派粛清と権力掌握

司馬倫は賈氏一派を討伐し、賈南風を幽閉。張華や裴頠など、政敵を次々と粛清し、朝廷内での権力を掌握します。そして、恵帝を幽閉し、自ら帝位を簒奪するに至ります。

帝位簒奪と短命な治世

司馬倫は帝位を簒奪すると、建始と改元し、大赦を下します。しかし、その政治は混乱を極め、官爵を濫発したため、朝廷は腐敗。孫秀が実権を握り、朝令暮改が横行します。

三王挙兵と司馬倫の敗北

司馬倫の簒奪に対し、斉王司馬冏、成都王司馬穎、河間王司馬顒が兵を挙げます。司馬倫は討伐軍を派遣しますが、司馬穎の軍に敗北。洛陽に迫られた司馬倫は、王輿らの手によって廃位され、司馬倫一派は粛清されます。

廃位と死

司馬倫は金墉城に送られ、金屑酒を飲まされて自害させられます。彼の子らも処刑され、司馬倫による簒奪は終わりを告げました。司馬倫の敗北後も、八王の乱は激化し、西晋の衰退を加速させることになります。

人物

司馬倫は学問を修めておらず、政治能力に欠けていました。その眼にはこぶがあり、人々はこれを妖異の象徴であると噂しました。彼の子らもまた、無能であり、互いに憎しみ合っていたと言われています。

逸話

司馬倫の政権時には、その乱れと短命さを暗示するかのような奇妙な事象がいくつかあったと伝えられています。

司馬倫は簒奪によって帝位についたものの、その治世は短く、西晋の混乱を招いた人物として歴史に名を残しました。

子女

世子 司馬荂
済陽王 司馬馥
汝陰王 司馬虔
覇城王 司馬詡

参考文献

『晋書』巻59 列伝第29
『資治通鑑』巻80 - 巻84

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