張珪 (元)

張珪（ちょう けい）

張珪（1264年 - 1328年）は、大元ウルスに仕えた漢人です。字は公端。

生涯

若き日の活躍

父は、崖山の戦いで南宋を滅亡させたことで知られる張弘範です。幼い頃から勇敢で、一人で虎を仕留めたという逸話も残っています。父・弘範が南宋の礼部侍郎・鄧光薦を救出し、張珪の師としたことは、彼の学問の基礎を築きました。16歳で攝管軍万戸に任じられ、父の死後、その地位と虎符を受け継ぎました。

盗賊鎮圧と朝廷での活躍

1282年、太平・宣州・徽州一帯で盗賊が発生すると、討伐を命じられます。軍の兵士が略奪を行うのを厳しく禁じ、盗賊を鎮圧しました。1292年に入朝すると、張瑄らが進言した行枢密院の廃止について、アンバイに意見を求められます。張珪は皇帝に直接意見を述べ、行枢密院の廃止を阻止しました。その後、枢密副使に任じられます。

権臣との対立と晩年

1307年、カイシャンが即位すると、尚書省の中丞に任じられます。ブヤント・カアンの時代には、皇太后ダギの隆福宮での大礼に対し、大明殿で行うべきだと主張し、カアンに認められました。シレムンが洪城軍を興聖宮に隷属させようとした際には、ダギの権勢を恐れず反対しました。1315年には中書平章政事となり、官の削減などを進言しています。

皇太后ダギがテムデルを中書右丞相に、別薛を参知行省政事に任命した際、張珪は彼らの器量ではないと批判しました。このことでダギの怒りを買い、杖刑に処されますが、カアンから慰められます。ゲゲーン・カアンが即位すると、集賢大学士に任命されました。

1323年の南坡の変では、逆賊に符印を奪われないよう目を光らせ、ソナムの処刑に反対しました。イェスン・テムル・カアンが即位すると、今後の対策を協議し、上奏しました。晩年は病に苦しみましたが、カアンから手厚い介護を受け、1328年に亡くなりました。

張珪は、激動の時代を生き抜き、元朝に貢献した人物として、歴史に名を残しています。

人物

武勇に優れ、若い頃には虎を仕留めたという。
学問にも励み、鄧光薦を師とした。
正義感が強く、権力者にも臆することなく意見した。
民を思い、飢饉に苦しむ民のために尽力した。

参考文献

植松正『元代江南政治社会史研究』汲古書院、1997年
杉山正明『モンゴル帝国と大元ウルス』京都大学学術出版会、2004年
野沢佳美「張柔軍団の成立過程とその構成」『立正大学大学院年報』第3号、1986年
『元史』巻175列伝62張珪伝
* 『新元史』巻139列伝36張珪伝

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