征東大将軍

征東大将軍とは

征東大将軍（せいとうたいしょうぐん）は、東夷を征討する将軍を意味する称号で、主に中国と日本で用いられました。この称号は常設ではなく、必要に応じて臨時に任命されるものでした。

アジア諸国における征東大将軍

古代のアジア諸国では、中国王朝から周辺国の君主に対して、その勢力を認め、関係を円滑にするため、様々な称号が与えられました。征東大将軍もその一つであり、主に以下の国々でその例が見られます。

高句麗

高句麗の君主は、中国の南朝から「征東将軍」（413年、東晋）、「征東大将軍」（417年、南朝の宋）などの称号を授与されました。また、北朝からは「征東将軍・領護東夷中郎将」（492年、北魏）という称号も受けています。

倭国王

倭の五王は、421年から478年にかけて、中国南朝の宋から「倭国王」の称号と共に「安東将軍」の称号を授与されました。さらに、438年には王族の倭隋ら13人の臣下が「平西将軍」「征虜将軍」「冠軍将軍」「輔国将軍」などの将軍号を受けています。倭王武は、479年に南朝の斉から「鎮東大将軍」号を、502年には南朝の梁から「征東大将軍」号を授与されています。

百済王

百済王は、372年以来、中国南朝から「鎮東大将軍」に任命されていましたが、502年には百済王余大が「征東大将軍」号を授与されています。

日本における征東将軍

日本では、律令制下において、平安時代初めに蝦夷征討の総司令官として、節刀を授けられ全権を委任された征東将軍・征東大将軍が臨時に任命されました。

784年には鎮守将軍であった大伴家持が征東将軍に任命され、788年には紀古佐美が征東大将軍に任じられました。

その後、承平天慶の乱（940年）の際には藤原忠文が、治承・寿永の乱（1184年）の際には源義仲がそれぞれ征東大将軍に任命されました。しかし、これらの任命は蝦夷征討を目的としたものではなく、それぞれ平将門の乱や源頼朝の追討を目的としたものでした。

足利尊氏と征東将軍

建武2年（1335年）には、中先代の乱が発生し、足利尊氏はその鎮圧を後醍醐天皇に願い出ました。当初、征夷大将軍の官職を望みましたが許されず、天皇の許可を得ないまま鎌倉へ出陣しました。結果として天皇から征東将軍の号を与えられ、北条時行を駆逐し、鎌倉を奪還することに成功しました。

関連項目

将軍
幕府
大将軍
征夷大将軍
征討大将軍
征西大将軍
鎮狄将軍
鎮守府将軍
騎兵大将軍
驃騎将軍
車騎将軍
衛将軍

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