後堀河院民部卿典侍

後堀河院民部卿典侍（ごほりかわいんのみんぶきょうのすけ）は、鎌倉時代前期に生きた女性歌人です。建久6年（1195年）に藤原定家の娘、藤原因子（ふじわらのいんし/よるこ）として誕生しました。母は藤原実宗の娘です。彼女の生涯は、歌を通して宮廷社会と深く結びついていました。

生涯

元久2年（1205年）より後鳥羽院に出仕し、その後、承久の乱を経て安嘉門院に仕えました。寛喜元年（1229年）には、九条竴子（後の藻璧門院）に仕える女房として後堀河天皇の内裏に出仕し、後に典侍となります。天福元年（1233年）に出家しました。

彼女の作品は、『新勅撰和歌集』をはじめとする勅撰和歌集や、歌合、私家集などに残されています。歌人としての才能は広く認められ、宮廷文化の中で重要な役割を果たしました。

逸話

1205年（元久2年）、十歳頃に日吉社に百日間参籠したという逸話が残っています。これは、後鳥羽院への出仕を前に、その成功を願って行われたと考えられています。幼い頃から宮廷に出仕することは、彼女の人生にとって大きな転換点であり、そのための準備として神仏に祈りを捧げたのでしょう。

また、亡くなった藻璧門院が夢に現れて歌を詠むという出来事や、同じ女院の夢告によって女房たちが嵯峨の釈迦如来に参詣するようになったという話も、父である定家に報告しています。これらのエピソードは、当時の人々が夢や霊的な現象を重視していたことを示しています。

作品

彼女の作品は、勅撰和歌集に数多く収録されています。また、定数歌や歌合でもその才能を発揮しました。

私家集としては『民部卿典侍集』があり、『続群書類従』や『私家集大成』に収録されています。この歌集は83首からなり、主人であった藻璧門院を失った哀しみを歌ったものが中心となっています。短い歌の中に込められた深い感情は、読む人の心を打ちます。

『民部卿典侍集』: 主人を失った哀悼歌集としての性格を持つ。

研究

彼女の生涯や作品については、多くの研究が行われています。森本元子氏の研究では、彼女の生涯や作品の背景にある宮廷文化や社会状況が詳細に分析されています。また、本位田重夫氏の研究では、『後堀阿院民部卿典侍集』について考察がなされています。

関連項目

藤原定家: 父であり、歌人としても著名。
後堀河天皇: 仕えた天皇。
九条道家: 当時の有力貴族。

後堀河院民部卿典侍は、歌を通してその時代を生きた女性であり、彼女の作品は、当時の宮廷文化や人々の感情を今に伝える貴重な資料となっています。

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