得業生

得業生（とくごうしょう）について

得業生（とくごうしょう）は、古代日本の学制における特別な学生の位であり、通常学生よりも高い学問や技術の習得が求められる者たちを指します。この制度は、大学寮・典薬寮・陰陽寮などの上級コースで設けられていました。得業生という称号は、優れた資質を持ち、特に学業に励む者に与えられました。

歴史的背景

得業生の制度は、天平2年（730年）3月に太政官によって設けられたことが始まりです。この時、大学に在籍する学生の中で、学業が浅薄な者や、貧しい家庭出身で十分な学費を支払えない者の存在が問題視されました。これを受けて、優れた者を選び、学問に専念できる環境を提供することが決定されたのです。

当初の選出では、大学寮に明経道、文章道、明法道、算道それぞれの分野から得業生が選ばれ、夏と冬の服や食料が供給されました。さらに、影響力のある学者が後進を育成するための仕組みも整えられました。

得業生の目的と役割

大学での得業生は、主に成績優秀な学生を推薦する目的で設置されましたが、陰陽寮や典薬寮においては、後継者の育成がその目的となっています。このため、これらの寮における得業生は、単なる学業の成績を超えた特別な役割を担っていました。

得業生の進展とその後の制度

得業生制度は、紀伝得業生の設置や、845年以前の大宰府得業生の創設により拡張されました。一定期間の学びの後、試験によって修了が認定され、各道の教官や専門官職に就く道が開かれました。次第に、得業生は式部省の貢挙を受験するためのコースとしても機能するようになりました。

特に、延喜13年（913年）では、得業生が貢挙受験の基本的な要件とされ、「得業生試」と呼ばれる試験が設定されました。この試験は、専門的な学者となるための過程として重要な位置を占めるようになりました。この結果、得業生はその後の学問体系においても大きな影響を及ぼしました。

得業生の消滅

得業生の制度は室町初期まで存在した文章得業生を除き、平安時代後期にはほとんど消滅しました。この制度の中で育成された多くの学者が、後の日本の学問の発展に寄与していくことになります。

参考文献

• - 『岩波日本史辞典』 p836、監修：永原慶二、岩波書店、1999年
• - 『国史大辞典』十一巻 p303、文：久木幸男、吉川弘文館、1989年
• - 『日本古代史事典』 p373、遠藤元男：編、朝倉書店、1973年
• - 『続日本紀』3 新日本古典文学大系14 岩波書店、1990年
• - 『続日本紀』全現代語訳（上）、講談社学術文庫、宇治谷孟：訳、1992年

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