御前沙汰

御前沙汰の概要

御前沙汰（ごぜんさた）は、室町幕府において、将軍が主宰し臨席する非公式な評定を指します。この制度は、幕府の政策決定において重要な役割を果たしてきました。元々は雑訴を扱うための評議でしたが、後に公的な決定もここで行われるようになりました。このような背景から、御前沙汰は「雑訴沙汰（ざっそさた）」とも呼ばれています。

起源と歴史

御前沙汰の起源を探ると、観応の擾乱に遡ります。この乱によって幕府官僚の分裂が生じ、2代将軍足利義詮は崩壊した評定衆と引付衆に代わる議決機関を求めました。そして、恩賞方で新たな合議体を設けたことが御前沙汰の始まりとされています。

3代将軍足利義満の時代には、幕府の組織が再編成され、しばらくの間、御前沙汰は行われなくなりました。しかし、出家していた元管領の細川頼之を呼び戻す際、彼に政策決定に関与させる必要が生じたため、将軍の主宰による非公式な評定として御前沙汰が再び利用されました。この時、将軍の意向がより反映されやすい形式が活用されたのです。

さらに義満は息子の義持に将軍職を譲った後も、幕府の実権を握り続けていました。公式な評定が開けない状況下で、再び御前沙汰を通じて政策決定を行い、義持はその意志に従う立場となりました。

御前沙汰の発展

6代将軍足利義教は将軍の権威を高めようと、御前沙汰の権威強化を図りました。彼は、雑訴に限らず所務もその評定対象とし、実務を担当する右筆や奉行人の中から「御前沙汰衆」を選出しました。この取り組みによって、御前沙汰は実質的に室町幕府における最高の評議機関となりました。

ただし、管領も自分の被官を用いて御前沙汰に関与しており、訴状の受付や将軍への裁許の手続きが行われていました。こうした構造は、依然として将軍とその直臣による政策決定の網の目を形成していたのです。

変遷と衰退

しかし、応仁の乱以降、将軍の臨席が減少し、管領も安定した地位を失っていきました。その結果、御前沙汰には将軍が参加しないことが多くなりました。11代将軍足利義澄の時代になると、名目上は将軍が主宰しているものの、実際には側近の内談衆が決定事項を取りまとめ、将軍に裁可をもらうという新しい形に変化したのです。

このように、御前沙汰は室町幕府の政治的ランドスケープの中で、時代とともに変わり続けました。その中で将軍の権威や権限、そして幕府の組織の在り方を反映した重要な機関であったと言えるでしょう。これからも歴史の中で御前沙汰の解釈や意義が議論され続けることでしょう。

関連項目

• - 雑訴決断所

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