恩賞方

恩賞方（おんしょうがた）は、建武政府および室町幕府における恩賞関連の業務を担当する部局です。最初に設置されたのは元弘3年（1333年）で、当時の後醍醐天皇が鎌倉幕府を滅ぼした後の政権を改革する一環として、恩賞の審議や調査を行う目的で設けられました。具体的な設置の時期や早期の制度については不明な点が多いものの、後醍醐天皇の意思を受けて、その業務は非常に重要な役割を果たしました。

建武元年（1334年）には、全国を四つの地域に分け、それぞれに頭人を任命する四番制が導入されました。この制度により、東海道・東山道を担当する吉田定房、北陸道の九条光経、畿内・山陽道・山陰道の万里小路藤房、南海道・西海道の四条隆資がそれぞれの地域の責任者となったのです。また、この際には、楠木正成や名和長年といった名士も寄人として参加し、旧幕府の法曹官僚であった伊賀兼光らも加わることとなりました。このような構成により、恩賞方は雑訴決断所との連携を強化し、より効果的な恩賞業務の実施が期待されました。

次に、室町幕府の恩賞方についてですが、建武3年（延元元年・1336年）、足利尊氏が建武政府を倒した後、彼は直ちに新たな政府の樹立に取り組みました。この際、足利宗家の家宰、執事の高師直を頭人として恩賞方を再度設置しました。尊氏は前政権の失敗を教訓にし、最終決定権は自己が親裁する形を取って、恩賞方に広範な責任を持たせました。具体的な業務には、恩賞の申請受理や恩賞地の選定、恩賞替地に関する裁判、恩賞下文の管理などが含まれていました。この根幹を担う業務は、後の室町幕府においても重要な要素となり、尊氏は必要に応じて審議にも参加して「御恩沙汰」と呼ばれる存在としてその職責を全うしました。

観応の擾乱が発生した際には、尊氏とその弟である足利直義の対立が表面化し、多くの官僚が直義側に離反したが、恩賞方は尊氏派の官僚によって支えられたため、大きな混乱は免れました。室町幕府の再建を図った2代将軍・足利義詮は、恩賞方を起点として再建計画を推進し、後にここで行われる会議を御前沙汰と呼ぶようになります。この会議は次第にただの恩賞にとどまらず、重要な問題を審議する場へと発展しました。また、法曹官僚である奉行人たちが、この恩賞方において重要な役割を果たすようになり、彼らは徐々に幕府の重要な政策形成に関与していきます。

さらに、足利義教の時代には、御前沙汰は恩賞方から切り離され、幕府の中枢として機能するようになり、次第に「御前奉行人」と呼ばれるようになりました。このシステムにより、しばしば奉行衆の中から特別に任命された者たちが恩賞業務を担う別奉行として活動するようになったと考えられていますが、詳細は今も不明な点が多く残っています。

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