相馬
御厨(そうまみくりや)は、中世に存在した寄進型の荘園で、現在の
茨城県取手市、守谷市、
千葉県柏市、
流山市、
我孫子市周辺に位置していました。「
御厨」とは、皇室や
伊勢神宮、下鴨神社などの領地を指します。相馬
御厨は
伊勢神宮の荘園として、その歴史は数々の武士たちの攻防によって彩られています。
相馬御厨の成立と変遷
相馬
御厨は、平安時代末期の武将である
千葉常重によって成立しました。
千葉常重は、
上総氏から相馬郡を譲り受け、
1130年に自らが
地主職を務める相馬郡布施郷を
伊勢神宮に寄進しました。この寄進により、
千葉常重は
伊勢神宮の下司となり、地利の上分(
田畑からの収穫物)や土産物を
伊勢神宮に納めることになりました。
しかし、相馬
御厨の支配は決して平穏ではありませんでした。
1136年には、下総守の
藤原親通が
千葉常重を逮捕・監禁し、相馬郷と立花郷を奪い取ろうとしました。さらに
1143年には、
源義朝が上総常澄の讒言を利用し、相馬郡を奪い、
伊勢神宮に寄進しようとしました。これらの出来事は、相馬
御厨が在地領主や国司、そして武士たちの思惑が交錯する場所であったことを示しています。
千葉常重の子である
千葉常胤は、父が奪われた領地を取り戻すために奔走しました。まず、
国衙に
官物を納めて相馬
郡司職を回復し、その後、
1146年に相馬郡を改めて
伊勢神宮に寄進しました。この寄進は、
源義朝による寄進を覆すものでしたが、相馬
御厨を巡る争いはこれで終わりませんでした。
平家政権下の
1161年、
佐竹義宗が相馬
御厨を奪い取るという事件が起こります。
佐竹義宗は、
藤原親通の証文を入手し、
伊勢神宮に寄進しました。
伊勢神宮は
佐竹義宗の寄進を認め、
千葉氏は相馬
御厨を失うことになります。この
佐竹氏の強奪は、相馬
御厨をめぐる争いが、単なる武力によるものではなく、当時の権力構造や法制度も絡み合っていたことを示しています。
治承・寿永の乱において、
源頼朝が挙兵すると、
千葉常胤はこれに味方し、平家方であった
佐竹氏を打ち破りました。この結果、
千葉氏は相馬
御厨を取り戻し、その後、
千葉常胤の次男である
相馬師常が
相馬氏を名乗り、相馬
御厨を支配することになりました。しかし、
伊勢神宮は
佐竹氏との
和与を有効と見做していたため、
千葉氏は
御厨の前身である布施郷の
地主職の立場を利用して支配を確立しました。そして、
1227年頃には
相馬氏が地頭職に任ぜられたことで、名実ともに相馬
御厨の支配権を回復しました。
相馬御厨が示すもの
相馬
御厨を巡る争いは、中世社会における在地領主の変貌と、国司との対立の激しさを示しています。
開発領主であった
千葉氏は、
郡司・郷司という役職によって
国衙から保証された領地を持っていましたが、それは常に国司によって脅かされる不安定なものでした。また、有力な武士たちは、自らの勢力拡大のために、相馬
御厨のような荘園を奪い合いました。相馬
御厨の争奪戦は、当時の武士たちの勢力争い、そして、荘園制度の限界を如実に表すものだったと言えるでしょう。
相馬
御厨は、
開発領主が自らの地位を守るために寄進を行い、寄進による保護にも限界があったことを示しています。この様な在地領主の動向は、後の
鎌倉幕府成立へと繋がって行ったと考えられています。
まとめ
相馬
御厨は、中世の荘園制度や武士の勢力争いを考える上で、非常に重要な事例です。
千葉氏をはじめとする在地領主たちの苦闘、そして、
伊勢神宮や武士たちの思惑が複雑に絡み合った歴史が、相馬
御厨という小さな荘園の中に凝縮されています。
参考文献
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岡
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山本隆志「東国における武士勢力の成立-
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千葉常胤の社会権力化」)
関連項目
上総氏
千葉氏
千葉常胤
大庭
御厨
外部リンク
*
千葉氏の歴史・
千葉常重