御堀耕助

御堀耕助の生涯

御堀耕助（みほり こうすけ）は、幕末期の長州藩を代表する志士の一人です。初めは太田市之進と名乗っていました。諱は直方。

長州藩士の太田要蔵を父として、萩の地で生を受けました。18歳になると江戸へ出て、斎藤弥九郎の剣術道場「練武館」に入門。ここで頭角を現し、やがて塾頭を務めるまでになりました。剣術の修行を終えて故郷へ戻った後は、藩の世子である毛利定広の小姓として仕えました。

尊王攘夷の機運が高まる文久3年（1863年）5月、長州藩が実施した馬関海峡（現在の関門海峡）での外国船への砲撃に参加しました。同年、大和国で挙兵に失敗し敗走してきた中山忠光が大阪の長州藩邸へ逃れてくると、危険を顧みず、彼を下関まで警護する任にあたっています。

元治元年（1864年）7月には、長州藩の立場を決定づけた禁門の変に参加しましたが、京都から敗走することとなりました。その後、長州藩と欧米列強四国連合艦隊との間で発生した下関戦争にも加わっています。これらの激動の中、彼は山田顕義や品川弥二郎らと共に、藩内で俗論派が台頭する状況に対抗するため、精鋭部隊である御楯隊を結成し、その総督に就任しました。

元治元年12月（西暦1865年1月）、高杉晋作らが藩の刷新と倒幕へと向かう藩論統一を目指して功山寺で挙兵すると、太田市之進こと御堀耕助はこれに強く呼応しました。御楯隊を率いて、俗論派との戦いを展開し、呑水や赤村といった地での戦闘で大きな活躍を見せました。この戦いを経て、藩の実権は再び倒幕派へと移り、長州藩の進むべき道が定まります。

慶応元年（1865年）、彼は太田市之進から御堀耕助へと名を改めます。

慶応2年（1866年）には、江戸幕府による第二次長州征伐が始まります。御堀耕助は引き続き御楯隊を指揮し、芸州口方面における戦線で奮闘。長州藩の勝利に貢献しました。

慶応3年（1867年）、藩政において重要な役割を担う参政に任じられます。同年8月、倒幕という共通の目標を持つ薩摩藩との連携を深めるため、柏村数馬と共に京都へ赴きました。そこで、薩摩藩の有力者である小松清廉、西郷隆盛、大久保利通らと会談し、来るべき倒幕実現に向けた具体的な計画について協議を重ねました。

明治維新後の明治2年（1869年）、藩の命令により、山縣有朋や西郷従道らと共に欧州への視察団に加わります。しかし、その道中、香港に立ち寄った際に病に倒れてしまい、やむなく一度帰国することとなりました。同年11月、改めて日本公務弁理職（総領事）に任命されると、フランスへ渡航するモンブラン伯爵とその秘書である前田正名と共に横浜を出発。パリで先行していた山縣たちと合流し、視察を再開しました。

海外視察を終えて帰国後、彼は薩摩で病気の治療を受けていましたが、病状は悪化の一途をたどります。故郷に近い三田尻へ戻った病床で、従兄弟にあたる乃木希典（乃木の父である乃木希次が御堀の父・要蔵の弟にあたります）が見舞いに訪れました。御堀耕助は、この若き従兄弟の才を見抜き、黒田清隆に紹介することで、乃木が後に陸軍で栄達する重要なきっかけを作ったとされています。

明治4年（1871年）、ついに病に勝てず、三田尻の地で若くしてその生涯を終えました。享年31という短い一生でしたが、幕末の動乱期において長州藩士として、また御楯隊総督として、倒幕という大きな目標に向かって駆け抜けた人物でした。

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