斎藤弥九郎

斎藤弥九郎の生涯と業績

斎藤弥九郎（さいとう やくろう）は、江戸時代後期から明治初期にかけて活躍した剣術家であり政治家です。彼は神道無念流の流派に属し、特に幕末の江戸三大道場の一つ「練兵館」を創立したことで知られています。弥九郎は千葉周作や桃井春蔵と並ぶ幕末の三剣客とされ、多くの有名な弟子を持ちました。維新後には徴士会計官権判事や造幣局権判事といった重要な公職にも就いています。

生い立ちと初期の経歴

斎藤弥九郎は越中国射水郡仏生寺村、現在の富山県氷見市で、農民の家に生まれました。家族は名族とされ、彼の父は組合頭の地位にありました。文化7年（1810年）、弥九郎は高岡へ奉公に出かけましたが、希望通りにはいかず、帰郷後、江戸を目指しました。文化9年（1812年）、親から一分銀を受け取り、旅をする中で経験を積みながら江戸に到達しました。

江戸では、旗本の能勢祐之丞に仕官し、同時に武道と学問に励む日々を送りました。彼は多くの師から剣術や儒学を学び、その実力を高めていきました。

練兵館の創設

20代の終わりに、弥九郎は岡田道場で師範代に昇進し、岡田の死後にはその後継者を支援しました。そして文政9年（1826年）、自ら独立して江戸の九段坂下に練兵館を創立しました。この道場は、後に幕末の江戸三大道場の一つとして名を馳せました。

彼の道場では、多くの有名な剣豪たちが学びました。特に長男の斎藤新太郎は廻国修行を行い、その実績から長州藩は彼の教えを高く評価しました。桂小五郎をはじめとする門弟たちは、後の時代に大きな活躍を見せました。

江川英龍との関係

弥九郎の経歴において重要な人物が江川英龍です。彼は弥九郎に対して資金援助を行い、弥九郎はこれ以降江川に仕えました。江川からは軍事に関する知識を受け取り、様々な防衛任務を遂行しました。大坂での調査や江戸湾の防備強化においても、弥九郎は江川と共に重要な役割を果たしました。

特に嘉永6年（1853年）、黒船来航時には、江川と共に江戸湾の防衛計画に参画し、実地の測量を担当しました。

幕末期の活動

安政期に入ると、弥九郎は水戸藩との関係を強化し、藩主徳川斉昭の前での武技披露や工作活動に関与しました。このころには、自身の名を長男に継がせ、篤信斎と名乗るようになりました。また、幕府の審査や取り締まりが厳しくなる中でも、密かに活動を続けました。

明治維新とその後

維新後、弥九郎は明治政府に仕官し、会計官権判事として大阪へ赴任。明治2年には造幣局の権允となり、火災の際には重傷を負いながらも重要書類を運び出す勇気を見せました。

彼は明治4年に74歳で亡くなりますが、その後の栄誉として贈従四位や剣道殿堂顕彰がありました。

まとめ

斎藤弥九郎は、剣術家としてだけでなく、政治家としても日本の歴史に名を残した人物です。彼の教えを受けた弟子たちは、明治維新の原動力となり、彼の影響は今もなお日本の武道界に色濃く残っています。

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