中山忠光

中山忠光の生涯

中山忠光は、江戸時代末期の公家で、参議中山忠能の七男として生まれました。母は平戸藩主・松浦[[清]]の娘愛子で、同母姉には孝明天皇の典侍である中山慶子がいます。このため、後の明治天皇となる祐宮睦仁親王にとっては叔父にあたる人物です。

忠光は、兄である中山忠愛の養子となり、幼少期の睦仁親王が中山家で養育された際、最も身近な存在の一人でした。1858年には侍従に任官し、1860年には睦仁親王への伺候を命じられるなど、朝廷内でも重要な役割を担っていました。

しかし、当時の朝廷は財政難に苦しみ、皇室の生活も質素なものでした。この状況が、忠光の過激な攘夷思想に火をつけたとされています。実父の忠能は朝廷の要職にあり、忠光はそこで尊王攘夷派の志士たちと交流を深め、過激な攘夷運動に身を投じていくことになります。

過激な攘夷活動

1863年、忠光は朝廷に新設された国事寄人に19歳で就任しますが、その過激な行動は周囲を困惑させました。岩倉具視と千種有文の暗殺計画を打ち明けたり、長州藩に身を投じたりと、その行動はエスカレートしていきます。長州では森俊斎と改名し、久坂玄瑞率いる光明寺党の党首として外国船砲撃にも参加しました。

京都に戻った忠光は、東久世通禧や烏丸光徳らと連絡を取り合い、水戸藩士らと会談を重ね、尊攘運動を推し進めようと画策します。しかし、その過激な行動に実父の忠能は手を焼き、武家伝奏に相談するほどでした。

1863年8月、忠光は「攘夷実行が求められている」と主張し、大和行幸の詔を機に京都を飛び出します。そして、攘夷先鋒の勅命を奉じる組織として『天誅組』を立ち上げ、大和国五條代官所に打ち入り挙兵します。

しかし、八月十八日の政変によって京都の尊攘派は一掃され、天誅組は幕府軍の追討を受けることになります。忠光は、この混乱の中で一時的に脱出に成功するものの、最終的には長州へと逃れることになります。

幽居と死

長州藩は忠光を保護しますが、幕府の密偵によって居場所が露見。忠光は、侍妾であった恩地トミと共に潜伏生活を送ります。その生活の中でトミは妊娠し、忠光と行動を共にします。

しかし、長州藩内での政変により、忠光は1864年11月15日、刺客によって暗殺されてしまいます。享年20歳という若さでした。長府藩は、忠光の死を病死として発表しました。

死後

忠光の墓は、山口県下関市の中山神社境内にあります。明治3年には、生前の官位を復され、正四位が贈位されました。長府藩主毛利元敏が叙爵の際に子爵にとどまったのは、忠光暗殺に関わったためという説がありますが、これは事実ではありません。

人物像

忠光は、筋骨たくましい美青年で、天誅組の主将として人々の注目を集めました。しかし、その性格は激情家で、気に入らないことがあると絶食したり、家を飛び出したりすることもあったようです。

子孫

忠光の死後、トミは娘の南加を出産。南加は後に中山家に引き取られ、嵯峨家に嫁ぎます。南加の孫は、清朝最後の皇帝の弟である溥傑に嫁いでいます。


中山忠光は、その短い生涯の中で、激動の幕末を駆け抜けた人物です。過激な攘夷運動に身を投じ、志半ばで命を落としましたが、その名は後世にまで語り継がれています。

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