御教書

御教書について

御教書（みぎょうしょ、みきょうしょ）とは、平安時代後期から室町時代にかけて、三位以上の地位にある人々の家司が主の意向を表すために発行した文書の一形態です。このような文書は、さらなる地位にある者や、それに準じる地位にある人たちの間でも利用されました。一方、四位以下の公家や守護大名に仕える家臣や家僕が発行する同様の文書は「奉書」と呼ばれます。

形式的特徴

御教書は、形式的には綸旨（りんし）、院宣（いんせん）、令旨（れいし）と同じカテゴリーに属します。これらの文書は、主に私信の形態をとりますが、身分の高い人々は自身で文書を作成することは少なく、通常は近臣や家司に執筆させます。この背景から、御教書の差出人は基本的に家司であることが一般的です。ただし、重要な場合には主が袖判を加えることで、文書の正式性を強化することがあります。

また、文末には「仰旨如此」や「者依仰執達如件」、「由被仰下候」などの文言が付され、内容が主の意向であることを強調します。これに対して、下文や裁許状などといった正式な効力を持つ文書が存在しますが、御教書は主に緊急の通達や命令を目的として発行され、文書としての格は比較的劣るとされていました。

歴史的背景

御教書の歴史は古く、現存する最古のものは、1116年10月12日に藤原忠実の手により発行された文書であることが知られています。摂関家の当主から発行される御教書は「殿下御教書」として特に重視されることがありました。また、源頼朝が作成した発給文書の中で下文、下知状、御教書を三本柱としたことにより、武家様文書の基礎が形成されました。ただし、頼朝が文治元年（1185年）に従二位に昇進するまでは、これらの文書は奉書と称されていました。

源頼朝の死後も、御教書は幕府の意向を広く伝達するための重要な手段として活用され、次第にその使用頻度が高まります。一方で、下文や下知状の重要性は次第に薄れていきました。室町時代に入ると、御教書は幕府による発給文書の中では最も格式が高い文書形式となりましたが、同時に私信としての「直状」形式の御内書が流行していくことになります。その結果、御教書は次第に使われなくなってしまいました。

また、今谷明は、足利義満が明から「日本国王」と冊封されて以降、義満が発行した御教書を特に「国王御教書」と呼び、その重要性に言及しています。

このように、御教書は時代の変遷とともに、形式や役割の変化を経てきた歴史深い文書の一つであり、当時の政治的状況や文化を反映する重要な役割を果たしました。

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