御稲御倉

御稲御倉：伊勢神宮の穀倉と神聖な儀式

伊勢神宮内宮の北西、宮域内に鎮座する御稲御倉（みしねのみくら）は、内宮の所管社の一つであり、古くから神宮の祭祀に深く関わってきた重要な施設です。別名、御稲御倉神（みしねのみくらのかみ）とも呼ばれ、内宮の正宮で祭祀が行われる度に、御稲御倉でも同時に祭祀が行われます。

神宮神田からの稲と大御饌

神宮神田で収穫された稲は、大切に抜穂（ぬいぼ）され、御稲御倉に納められます。この稲は、内宮の祭祀に合わせ、御稲御倉から取り出され、大御饌（おおみけ）として天照大神に捧げられます。つまり、御稲御倉は内宮の穀倉として、神聖な稲を管理し、天照大神への供物を支える重要な役割を担っているのです。

御稲御倉への稲の納め入れや、祭祀への供物としての稲の取り出しは、古式ゆかしい厳格な儀式によって執り行われます。装束を身につけた神職が、神聖な稲を御倉に納め、取り出す作業は「御稲奉下（ごとうほうげ/みしねほうげ）」と呼ばれ、前日から参籠潔斎（さんろうけっさい）した神職によって行われます。奉下された稲は、稲扱（いねこき）、籾摺（もみすり）、七分搗きなどの工程を経て、忌火屋殿で神酒、御餅、御飯（おんいい）に調理され、神前に供えられます。

唯一神明造の社殿

御稲御倉の社殿は、内宮と同じ唯一神明造という、神道の神社建築様式で建てられています。内宮の方角（東）に向かって建ち、高床の切妻屋根、千木・鰹木を備えるなど、内宮の東西宝殿や外幣殿と酷似した構造をしています。高床であるため、御稲奉下の際には取り外し可能な階段が取り付けられ、権禰宜が御鑰（みかぎ）を開錠して御扉を開き、稲を取り出します。

社殿には、玉垣や賽銭箱はなく、神聖な儀式に特化した簡素な造りとなっています。神宮式年遷宮の祭事の一つである「心御柱奉建（しんのみはしらほうけん）」で用いられる心御柱も、御稲御倉に納められるという重要な役割も担っています。

御稲御倉神と歴史

御稲御倉の祭神は御稲御倉神です。御稲御倉の守護神として祀られ、神宮式年遷宮に伴って社殿が建て替えられる際には、一時的に外幣殿に遷座します。平安時代の『大治御形記』には保食神（うけもちのかみ）、鎌倉時代の『神名秘書』にはウカノミタマと記されています。

古代より存在したと考えられており、かつては調御倉（つきのみくら）・御塩御倉・鋪設御倉と共に、板垣外の西方に建っていました。平安時代中頃からは外玉垣の内側に移り、当時は神明造ではなく校倉造で、千木・鰹木はなかったようです。正宮の敷地内にあったため、式年遷宮のたびに移動していましたが、中世の末に4棟とも廃絶しました。

天正年間（1573年-1592年）に、4棟のうち御稲御倉のみが神明造で復興され、以後、式年遷宮ごとに建て替えられています。室町時代以降は、神嘗祭の織御衣（おりのみそ）がここで織られたことから、「御機殿」の異名を持っていました。明治以降、御稲御倉神が祀られるようになり、1889年（明治22年）には荒祭宮へ向かう道の途中に鎮座位置が固定されました。

アクセス

御稲御倉へのアクセスは、JR参宮線・近鉄山田線伊勢市駅、または近鉄山田線・鳥羽線宇治山田駅から三重交通バスを利用するか、伊勢自動車道伊勢西ICまたは伊勢ICから車でアクセスできます。宇治橋から内宮（正宮）へ向かう参道を進み、内宮の西側から荒祭宮へ向かう参道を進むと、御稲御倉と外幣殿があります。

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