微笑みに乾杯

微笑みに乾杯

「微笑みに乾杯」は、日本のロックバンド、安全地帯が1988年にリリースした19枚目のシングルである。この楽曲は、彼らの前作「I Love Youからはじめよう」のリリースから約2か月後に登場し、作詞は松井五郎、作曲は玉置浩二が担当した。編曲は安全地帯自身と星勝が手掛けている。

この曲が描いているのは、すれ違いがちな恋人たちの複雑な心理である。互いに心の内を感じながらも、前を向いて進もうとする様子が、優しくも切ないメロディにのせられて表現されている。また、安全地帯が活動を休止する前のリリースであったため、ファンの間でいくつかの憶測が飛び交うこととなった。

「微笑みに乾杯」は、玉置が出演したJTの「SOMETIME MIASS」のCMソングとしても知られており、CMのキャッチコピーは「装う メンソール」であった。この曲はオリコンシングルチャートで最高6位を記録し、10週にわたりチャートインした。なお、本作はオリジナルアルバムには含まれなかったが、後にベストアルバム『I Love Youからはじめよう -安全地帯BEST-』に収録された。

背景

安全地帯は、6枚目のアルバム『安全地帯VI〜月に濡れたふたり』をリリースした後、1988年の4月から7月にかけて「MIASS CONCERT」と題した全国ツアーを行った。このツアーは17都市で24公演が予定され、多くのファンと触れ合う機会を提供した。しかし、リリース前日の8月24日、メンバーは音楽番組『夜のヒットスタジオDELUXE』に出演し、「より良い音楽をやるために少しの間活動を休止する」と報告した。翌日にはこのシングルがリリースされ、正式に活動を休止する運びとなった。

活動休止に対して矢萩渉は、「やり残したことがあるという思いが残り、閉塞感を強く感じた」と言及している。その後、安全地帯のメンバーはそれぞれソロ活動に専念することになった。

音楽性と歌詞

「微笑みに乾杯」は、恋人同士のすれ違いと、思い出を振り切って前へ進む決意を歌ったバラードである。その歌詞はシンプルでありながら、聴く人の想像力を喚起させる。具体的には「彼女を微笑みで送り出す」という内容が、ファンの感情と結びつき、活動休止というバンドの状況とも重なり、多くの解釈を生み出した。

リリースとメディアでの使用

このシングルは、1988年8月25日にKitty Recordsから7インチレコードと8センチCDの2形態でリリースされた。本作は安全地帯のシングルとして最後の7インチレコードでのリリースであり、また昭和から平成への元号改元直前にリリースされたため、時代の転換期を象徴する作品でもある。オリコンシングルチャートでは最高6位を獲得し、売り上げは8.4万枚に達した。

ライブ・パフォーマンス

「微笑みに乾杯」は、テレビ番組『夜のヒットスタジオDELUXE』、そして後の『ミュージックステーション』でも演奏された。この時、玉置はピアノとストリングスによるアレンジで、楽曲をしっとりと披露した。

カバー

また、本作はさまざまなアーティストにカバーされている。森川美穂は2019年のアルバム『another Face - tribute to Goro Matsui + Koji Tamaki -』に収録し、台湾のシンガー、レオン・ライは広東語バージョンを「黎明前的浪漫」というタイトルで発表した。

このように、「微笑みに乾杯」は、単なるシングルとしての枠を超え、多くの人々に記憶され、愛され続けている名曲である。

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