徳島自衛官変死事件

徳島自衛官変死事件とは

1999年12月25日、徳島県で発生した海上自衛官の不審な死に関する事件です。当時33歳の海上自衛官は、実家へ帰省中に消息を絶ち、2日後に阿南市の河川敷で遺体となって発見されました。当初、警察は自殺と断定しましたが、その後の遺族やメディアの調査によって、多くの不審点が明らかになり、現在も真相解明が求められています。

事件の経緯

事件当日、自衛官は交際相手とドライブに出かけ、彼女を送った後に消息を絶ちました。警察は、路上に放置された自衛官の車を発見しましたが、事件性があるとは考えず、実家に連絡したのみでした。2日後、遺体は福井川河川敷で発見されました。県警は当初、この件を自殺と断定し捜査を打ち切りました。

しかし、遺族は事件への疑念から、2000年8月18日に県警に捜査を申し入れました。その後、2001年6月27日に徳島地方検察庁に、2003年2月21日に県警に告訴しましたが、県警は2度の再捜査後、殺害された疑いがないと判断しました。2004年10月8日、遺族は徳島検察審査会に審査を申し立てましたが、2005年4月20日に不起訴相当と議決されました。遺族は現在も独自の調査を続けています。

現場の状況と不審点

1. 車の損傷: 自衛官の車の屋根には不自然な傷がありました。警察はレッカー移動の際にできたと説明しましたが、通常、レッカー移動でそのような傷はつきにくいとされています。
2. 遺体発見位置: 遺体は、自衛官が飛び降りたとされる橋梁から4.2メートルも離れた場所にありました。橋の欄干の高さ（85cm）から、助走なしでこれだけ遠くに飛ぶことは困難です。立ち幅跳びの世界記録保持者でも3.5m程度しか跳べません。
3. 欄干の指紋: 橋の欄干からは、自衛官の指紋が発見されませんでした。欄干の高さから、手を使わずに乗り越えることは困難です。
4. 足跡の不一致: 車の停車位置から橋まで、自衛官の足跡が確認されていません。
5. 死因と警察発表: 司法解剖の結果、死因は転落前に受けた胸部大動脈の損傷であると考えられました。警察は当初、帰宅途中の事故でエアバッグが作動したことが原因と発表しましたが、事故場所が自衛官の実家と反対方向であること、事故現場と遺体発見現場が8kmも離れていること、エアバッグの作動だけで大動脈損傷が起こりうるのかなど、多くの疑問が残りました。
6. 遺体の状態: 遺族が依頼した医師によれば、自衛官は背中からではなく、尻から地面に付いた可能性が高いとされています。
7. 自殺理由: 警察発表の自殺理由は「事故を起こし、車が壊れた腹立たしさから」というものでしたが、不自然さが残ります。
8. 警察の対応: 司法解剖の結果が判明する前に、県警から自衛隊に自殺と断定されたと連絡が入っていました。
9. 上着の圧痕: 現場から発見された上着には円状の圧痕があったと遺族が証言しましたが、警察が回収後に返却した際には消えており、証拠品の取り扱いに疑問が残ります。警察は後に「そのような圧痕はそもそもなかった」と発表しました。
10. 暴走族の目撃情報: 事件当日、現場付近で暴走族が白いセダン車を追いかける姿が目撃されており、自衛官の車と似ていたことから、事件への関与が疑われています。

関連書籍・参考資料

『お兄ちゃんは自殺じゃない』 新潮社 2002年12月 ISBN 4104571016 - 実妹が著述

関連項目

生坂ダム殺人事件 - 自殺として処理された後に、真犯人が名乗り出た事件。本件と類似点がある。

まとめ

徳島自衛官変死事件は、多くの不審点や警察の対応の不透明さから、単なる自殺事件として片付けられない複雑な側面を持っています。遺族は真実の解明を求め、長年にわたり活動を続けています。

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