心筋炎

心筋炎（Myocarditis）



心筋炎とは、心筋に炎症が生じる疾患で、原因としては感染症や中毒、または未解明の要因が挙げられます。無症状であることもあれば、発熱や動悸、呼吸困難などの症状が現れることもあります。

原因


心筋炎の主な原因は感染症です。具体的には細菌、ウイルス、マイコプラズマなどが心筋に炎症を引き起こすことがよくあります。中でも、コクサッキーB群ウイルスが特に多いとされ、HIVやC型肝炎ウイルスも心筋炎を発症させる要因となっています。また、サルコイドーシスや膠原病、さらにはワクチン接種や薬物、放射線による影響も考えられます。

特に近年では、COVID-19が心筋炎の発症に関与することが報告されており、これはウイルスに対する免疫反応が過剰になることで炎症が引き起こされるためとされています。加えて、COVID-19ワクチン接種後にも心筋炎や心膜炎が見られることがありますが、多くの場合は軽症であることが多いとされています。日本循環器学会は、ワクチン接種による利益がリスクを上回るとしています。

犬においては、コクサッキーB群ウイルスをはじめとするさまざまなウイルスや細菌、原虫が心筋炎を引き起こすことがあり、感染症に関連して発症することが多いです。

分類


心筋炎は組織学的な観点からいくつかの種類に分けられます。主にリンパ球性心筋炎、好酸球性心筋炎、巨細胞性心筋炎、肉芽腫性心筋炎の4つがあります。


劇症型心筋炎


心筋炎の中でも特に重篤なものが「劇症型心筋炎」です。これは心機能が急激に低下し、全身の循環が保てなくなる状態を指します。こうした場合、強心剤や人工呼吸による助けも効果がないことが多く、人工心肺装置の装着が必要になることもあります。

症状と所見


心筋炎の症状は多様であり、無症状のこともあれば、以下のような深刻な症状が見られることもあります。
  • - 息切れ（約70%）
  • - 胸痛（約30%）
  • - 動悸、疲労、めまいや失神、むくみ、発熱
  • - 不整脈や心膜摩擦音（心膜炎の合併時）

急性のウイルス性心筋炎では、前駆症状として風邪のような症状が1〜2週間前に観察されることがあります。吐き気や下痢といった消化器の症状があることもあります。

診断


心筋炎の診断は難しいですが、心電図では特異的な変化が見られます。急性期には房室ブロックや心室性期外収縮、陰性T波などが通常見られます。さらに、心筋の損傷に伴い心筋逸脱酵素が上昇することも診断の手助けになります。心エコー検査やトロポニンTなどのバイオマーカーも利用されます。

治療


心筋炎の治療は、主に対症療法が中心です。特効薬は存在しないため、心不全や不整脈に対する治療が行われます。重篤なケースでは人工心肺装置の使用が検討され、心機能がなかなか回復しない場合は心臓移植が選択肢となることもあります。

疫学


心筋炎の具体的な発生率は不明ですが、患者の中には無症状の者も多く、そのため見逃されがちです。報告によると、心筋炎は特に小児においてウイルス感染が多くの原因となっており、全体の約2〜7%のCOVID-19患者において心筋炎の発症が確認されています。妊婦や小児、免疫不全患者に多く見られ、特に若い男性において発症リスクが高いことが指摘されています。若年成人における死因の一因ともなっています。

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