忌宮神社

忌宮神社の概要

忌宮神社は、山口県下関市に位置する歴史ある神社です。長府の城下町のほぼ中心にあり、仲哀天皇が熊襲平定の際に滞在したとされる豊浦宮の跡に建てられました。式内社であり、旧社格は国幣小社、現在は神社本庁の別表神社となっています。また、長門国二宮とされ、飛地境内として国の天然記念物である満珠島・干珠島を有しています。

この神社は、魁傑將晃が荒熊稲荷神社で九州場所の必勝祈願を行い優勝したことが縁となり、毎年11月3日の三日相撲に合わせて参拝することでも知られています。荒熊稲荷神社脇には相撲資料館が併設されており、魁傑や大乃国康の化粧まわし、優勝杯、大銀杏などが展示されています。

祭神

忌宮神社の本殿には以下の三柱の神が祀られています。

第一殿：仲哀天皇
第二殿：神功皇后
第三殿：応神天皇

また、境内には以下の別宮・摂末社があります。

若宮社：仁徳天皇
高良社：地主大神・武内宿禰
八坂神社：素戔男尊をはじめとする42柱の神々（神社合祀による）
荒熊稲荷神社：宇迦之御魂神・宗像三女神
惣社宮：天神地祇
守宮司神社：応神天皇

歴史

忌宮神社の創建は、仲哀天皇元年（192年）に遡ります。仲哀天皇が熊襲征討のために訪れ、翌年に豊浦宮が建てられました。三代実録によれば、仲哀天皇4年（195年）には秦の始皇帝の末裔である功満王が渡来し、蚕の卵を献上したとされ、豊浦宮が蚕種渡来の地とされています。

仲哀天皇が亡くなった後、神功皇后が三韓征伐からの帰途、豊浦宮の跡に祀ったのが始まりと伝えられています。聖武天皇の時代には、仲哀天皇を祀る神殿を「豊浦宮」、神功皇后を祀る神殿を「忌宮」、応神天皇を祀る神殿を「豊明宮」と称し、三殿別立でした。しかし、中世に火災により全て「忌宮」に合祀され、現在に至ります。延喜式神名帳には「長門国豊浦郡 忌宮神社」と記載され、小社に列しています。

足利尊氏もこの神社を篤く信仰しており、戦勝祈願を行い法楽和歌を奉納しています。長府毛利家の庇護も受け、歴代藩主を祀る豊功神社も境内に置かれていました（現在は宮崎八幡宮と合祀）。古くから文武の神、勝運の神として歴代の朝廷から崇敬され、安産の神としても庶民の信仰を集めてきました。

年中行事

忌宮神社では、年間を通して様々な祭事が行われています。

奉射祭：1月15日
蚕種祭：3月28日
島祭：4月2日
春季大祭：5月15日（最寄りの日曜日）
夏越祭：7月14日 - 16日
数方庭祭：8月7日 - 13日（毎夜）
秋季大祭：10月15日（最寄りの日曜日）
三日相撲：11月3日
御斎神事：12月7日夕 - 15日暁
例祭：12月15日

特殊神事

数方庭祭

数方庭祭は、8月7日から13日まで7夜にわたり行われる特殊な祭です。期間中、男子は幟、女子は切籠と呼ばれる灯籠を吊した笹竹を持って、鉦や太鼓に合わせて鬼石の周りを踊り舞います。この祭りは「天下の奇祭」とも呼ばれています。

伝説によると、仲哀天皇の時代に熊襲が襲撃してきた際、天皇が自ら討伐し、その戦勝を祝って塵輪の屍体を囲んで踊ったのが起源とされています。石見神楽など各地の神楽舞にも「塵輪」という演目がありますが、この伝説が基になっていると言われています。数方庭祭が行われなかった年には疫病が流行したという逸話も残っています。

「すほうてい」は「スホーデン」「スッポウディ」などとも呼ばれ、朝鮮半島の言葉との関連も指摘されています。現在では、五穀豊穣、子孫繁栄、厄難退除、先祖供養などの意味を持つ祭りとなっています。

御斎神事

御斎神事は、例祭の前の12月7日夕刻から15日暁にかけて行われる厳格な神事です。この期間は、境内に注連縄が張り巡らされ、一般の参拝が制限され、神職も境内から出ることが許されません。御斎神事中は深夜に様々な秘祭が行われ、神職は風呂に入らず、髭も剃れず、食事も粥と漬け物、お湯のみで過ごします。

15日暁に忌明けとなり、身を清めて例祭に臨みます。神事の開始を告げる板神楽神事や、御衣・御神宝調製、三朝神事、全神職の海中潔斎などが行われます。また、16日の夕刻には御斎神事と例祭の終了を報告する後烏神事が行われ、この際には惣社町の町民が囃歌で見送ります。

文化財

忌宮神社には、以下の文化財があります。

重要文化財
刀 無銘（伝則宗）折り紙付き
太刀 銘備州長船盛光 応永廿三年八月日
豊浦宮法楽和歌（足利尊氏奉納）
忌宮神社文書 28巻3冊（372通）・忌宮神社境内絵図1幅（附:忌宮神社記録2巻12冊）
県指定文化財
狩野芳崖奉納の絵馬
市指定文化財
能面・狂言面


忌宮神社は、その長い歴史と数々の祭事を通じて、地域の人々に深く愛され、信仰を集めている神社です。

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