志賀淑雄

志賀淑雄：零戦パイロットから実業家へ、波乱に満ちた生涯

志賀淑雄（しが よしお、1914年 - 2005年）は、日本の海軍軍人で、最終階級は海軍少佐でした。東京都出身で、旧姓は四元。海軍兵学校を卒業後、パイロットの道を志し、数々の激戦を潜り抜けた経歴を持ちます。太平洋戦争後も、実業界で活躍した、波乱に満ちた生涯を送りました。

軍人としての志賀淑雄

志賀は、海軍軍人であった父の影響を受け、海軍兵学校に入学。同期には伏見宮博英王もおり、入学当初から波乱含みの人生を送ることになります。海軍兵学校在学中に、源田実大尉率いる特殊編隊飛行（源田サーカス）の公演を見て、パイロットの道を決意しました。

少尉任官後は、霞ヶ浦海軍航空隊や佐伯海軍航空隊に所属し、戦闘機専修課程を修了。日中戦争では、南京の第13航空隊に配属され、戦闘経験を重ね、初陣で敵機を撃墜しました。その後も、横須賀航空隊、空母赤城、大分航空隊などに所属し、パイロットとしての腕を磨いていきます。

太平洋戦争が始まると、志賀は空母加賀の戦闘機隊に所属。真珠湾攻撃に参加し、オアフ島への最初の攻撃部隊として出撃しました。真珠湾攻撃後も、ラバウル、カビエン、ダーウィンなどの作戦に参加。数々の激戦を経験し、空母隼鷹、飛鷹の飛行隊長を歴任しました。

1943年には、海軍航空技術廠のテストパイロットに転身。紫電改や烈風のテスト飛行を行い、その性能を見極める重要な役割を果たしました。テストパイロットとしての経験は、のちの彼の人生に大きな影響を与えます。

終戦間近の1945年には、第三四三海軍航空隊（343空）の飛行長に就任。紫電改が集中配備されたこの部隊で、司令の源田実大佐と共に、部隊の指揮を執ります。343空では特攻作戦の命令を断固拒否し、部下の命を守り抜きました。終戦後、343空隊員と共に紫電改の米軍への引き渡しにも携わりました。また終戦直後には、源田実大佐率いる皇統護持作戦にも参加しました。

戦後の志賀淑雄

戦後は、川南工業、ノーベル工業に勤務。警察官の護身装備や爆発物処理機材などの開発に携わり、1955年にはノーベル工業の社長に就任、1994年には会長に就任するまで活躍しました。

戦後も、零戦搭乗員としての経験を生かし、自衛隊や米軍からの講演依頼も多く、戦没者慰霊活動にも積極的に参加しました。零戦搭乗員会代表も務め、後世への語り部としての役割も担いました。

撃墜数については、単独撃墜6機、協同撃墜多数と語っていますが、個人の功績よりも共同戦果を重視する海軍の伝統を重んじ、戦後の英雄崇拝的な風潮には疑問を感じていました。

2005年、91歳で逝去。海軍軍人として、そして実業家として、激動の時代を生きた志賀淑雄の生涯は、多くの後世への教訓を残しています。

参考文献

Hata, Ikuhiko; Yasuho Izawa, Don Cyril Gorham (translator) (1975 (original) 1989 (translation)). Japanese Naval Aces and Fighter Units in World War II. Annapolis, Maryland: Naval Institute Press. ISBN 0-87021-315-6
Toland, John (2003 (1970)). The Rising Sun: The Decline and Fall of the Japanese Empire, 1936–1945. New York: The Modern Library. ISBN 0-8129-6858-1
神立尚紀『零戦最後の証言―海軍戦闘機と共に生きた男たちの肖像』光人社〈光人社NF文庫〉、2010年。ISBN 978-4769826712。
ヘンリー境田、高木晃治『源田の剣 第三四三海軍航空隊 米軍が見た「紫電改」戦闘機隊』ネコ・パブリッシング、2003年。ISBN 978-4777050079。
* 佐々淳行 「勲を語らなかった零戦の英雄を悼む」『諸君!』、文藝春秋、2006年2月号

もう一度検索