応永の乱

応永の乱とは

応永の乱は、室町時代の応永6年（1399年）に、有力守護大名であった大内義弘が室町幕府に対して起こした反乱です。この乱は、室町幕府の権威を揺るがす大きな出来事であり、当時の政治情勢や大名間の対立を理解する上で重要な出来事です。

乱の背景

当時の室町幕府は、将軍の権力が弱く、有力な守護大名たちの連合によって支えられていました。3代将軍足利義満は、将軍権力の強化を目指し、自らの権勢を示すために花の御所を造営し、直轄軍である奉公衆を増強しました。また、有力守護大名の弱体化を図り、様々な策略を用いて大名たちの勢力を削ぎました。例えば、康暦の政変では細川氏と斯波氏の対立を利用して管領の細川頼之を失脚させ、土岐康行の乱では土岐康行を挑発して挙兵させ、これを討伐しました。さらに明徳の乱では、山名氏の分裂を画策し、大勢力であった山名氏を没落させました。

大内氏の台頭

大内氏は、百済の王子を祖と称し、周防に土着した武士でした。南北朝時代には南朝に属しましたが、後に北朝に帰順し、幕府から周防、長門、石見の守護職に任じられました。大内義弘は、九州探題の今川了俊に従い、九州の南朝勢力との戦いで武功を上げ、豊前守護職も加えられました。明徳の乱でも活躍し、和泉と紀伊の守護職を与えられ、足利氏一門に準じる待遇を受けるまでになりました。さらに、朝鮮との貿易で莫大な富を蓄え、その勢力を拡大しました。

義満と義弘の対立

足利義満は将軍職を嫡男の義持に譲り、太政大臣に昇りましたが、実権は握り続けました。義満は北山第の造営を始め、諸大名に人員の供出を求めましたが、大内義弘はこれに従わず、両者の関係が悪化しました。また、義弘が少弐氏討伐を命じられた際、弟の満弘が討ち死にしたにもかかわらず、恩賞がなかったことや、義満が裏で少弐氏と菊池氏に義弘を討つように命じていたという噂も立ち、義弘の不満は募っていきました。さらに、義弘が朝鮮使節から多大な進物を受け取っていたことが讒言され、義満と義弘の対立は決定的となりました。

挙兵への動き

義満は度々義弘に上洛を促しましたが、義弘は和泉、紀伊の守護職を剥奪されることや、上洛したところを誅殺されるという噂に不安を感じました。追い詰められた義弘は、鎌倉公方の足利満兼と密約を結び、今川了俊が仲介しました。さらに、土岐詮直や宮田時清、京極秀満ら、反義満勢力と連携し、挙兵の準備を進めました。

戦いの経過

応永6年（1399年）10月、大内義弘は軍勢を率いて和泉堺に上陸し、幕府に対して反旗を翻しました。義満は直ちに討伐軍を派遣し、堺を包囲しました。大内軍は堺に堅固な城を築いて篭城しましたが、幕府軍の猛攻に耐えきれず、最終的に落城しました。義弘は、最期まで奮戦しましたが、討ち死にしました。同時に、各地で反乱が起こりましたが、幕府軍によって鎮圧されました。

戦後

乱後、大内氏は一時的に勢力を失いましたが、義弘の弟である盛見が周防、長門の守護職に返り咲き、再び勢力を盛り返しました。足利義満は、この乱を通して将軍権力を確立し、室町幕府の安定化を図りました。

応永記

この乱の内容は、軍記物語である『応永記』に詳しく記されています。作者や成立年は不明ですが、乱の終結から間もない時期に成立したと考えられ、史料としての価値が高いとされています。

応永の乱は、室町幕府の権力構造や、守護大名の動向を理解する上で非常に重要な出来事です。この乱を通して、室町幕府はより強固な権力を確立していくことになります。

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