忠義王

忠義王（ただよしおう / ちゅうぎおう）

忠義王は、室町時代に南朝再興を志した後南朝の皇族です。自天王（北山宮）の弟にあたりますが、その出自や生涯については、史料が乏しく不明な点が多く残されています。

生涯

忠義王に関する確実な情報は限られています。『南朝皇胤紹運録』では父を空因（金蔵主）としていますが、一次史料を重視する研究者からは疑問視されています。

芝葛盛は、『康富記』に見られる梵勝・梵仲兄弟が忠義王にあたる可能性を示唆しています。中村直勝に至っては、北山宮・河野宮が皇胤であること自体を疑っています。村田正志は、竜泉寺の伝後醍醐天皇御木像の厨子から、忠義王を長慶天皇の三世孫と推定しています。森茂暁は、長禄の変に関する古文書から、「河野宮」という呼称は確認できるものの、忠義王との断定には慎重な姿勢を示しています。

このように、系譜上の位置づけが不明確な忠義王ですが、長禄元年（1457年）に赤松家再興を目指す遺臣らによって殺害されたという事実は、歴史的な記録に残されています（長禄の変）。

長禄の変

長禄の変は、禁闕の変で後南朝が持ち去った三種の神器の一つ、神璽の奪回を目的とした赤松家遺臣らによる事件です。

上月満吉の手記「堀秀世上月満吉連署注進状」によれば、赤松家遺臣らは神璽奪回と引き換えに、後花園天皇の綸旨と足利義政の御内書を得て、次郎法師丸（後の赤松政則）を家督として赤松家再興を認めさせる約束を取り付けたとされています。この手記には、事件に関わった人数は30人と記されています。

一方、「赤松記」によれば、遺臣らは浪人暮らしに困窮し、吉野殿に協力して都を攻め落とすと虚言を弄して後南朝勢力に接近したとされています。

長禄元年12月2日、大雪の中、遺臣らは自天王のいる吉野奥北山と忠義王のいる河野郷へ二手に分かれて襲撃をかけました。上月満吉は河野郷の二宮襲撃に加わり、忠義王の首を討ち取るという重要な役割を果たしました。

「赤松記」によれば、北山の一宮も丹生屋帯刀左衛門とその弟によって討たれ、神璽の奪回にも成功したものの、吉野の郷民らの追撃を受け、兄弟ともに討死。神璽は奪い返されてしまいました。つまり、両宮の殺害には成功したものの、赤松家再興の条件であった神璽の奪回には失敗したのです。

その後、赤松家遺臣らは、長禄2年（1458年）に越智家栄らの協力を得て、再度神璽を奪取することに成功しました。

墓所

忠義王は御所を抜け出し、本村の高原で没したとも伝えられています。墓所は、金剛寺（川上村）、瀧川寺（上北山村）、南帝王陵（川上村高原区内）の3か所に存在します。明治期に宮内省（宮内庁）は、瀧川寺のものを自天王の墓、金剛寺のものを忠義王の墓と指定しましたが、村田正志は史学的な解決は得られていないとして、その真偽は不明であると指摘しています。

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