怪火

怪火（かいか）

怪火とは、原因が不明な火が突如として現れる現象を指します。この現象は鬼火、人魂、ウィルオウィスプなどの名称で知られ、各国においてさまざまな事例が存在しています。特に湿度の高い地域などに多く見受けられます。

この火は、一般的に人々に恐れられ、伝説においては死者の霊や悪魔、妖怪の仕業、あるいは妖精のいたずらと語られることが多いです。怪火が出現した後に人が死ぬことがあり、それが死の予兆であるとされています。また、ドイツやスコットランドでは、怪火の出現場所に財宝が埋まっているという迷信も存在し、これが人々にさらなる興味を抱かせているのです。

数多くの怪火は、自然現象や誤認、錯覚によって説明される場合があります。近年になって、セントエルモの火や不知火などの一部は、放電現象や大気光学効果によるものと解明されましたが、他の怪火についても多くの説が提唱されています。中には可燃性ガスの引火や、人工物の錯覚によるものもありますが、それでもなお、多くは科学的に説明されていないまま残っています。

各地の怪火の伝承

筬火（おさび）

宮崎県延岡地方の伝説の一つで、明治時代中期まで目撃談がありました。雨の日の夜、延岡の三角池に二つの火の玉が現れるとされ、ある女たちの争いがきっかけで怨念となってこの怪火が生じたと語られています。この火を見た人々には不幸が続くとされました。

オボラ

愛媛県大三島の怪火で、亡者の霊火とされる現象です。同県の宮窪村では海上や墓地に現れる怪火の伝説があり、これらは同じものと見なされていることが多いです。

金の神の火（かねのかみのひ）

愛媛県怒和島に伝わる火で、大晦日によく見られます。氏神の後ろに現れる提灯のような火で、人々の間では歳徳神の出現を知らせるものとして知られています。

金火（きんか）

江戸時代の奇談集『三州奇談』に記載されるもので、上使街道八幡や小松で火縄のように現れるとされています。

蜘蛛火（くもび）

奈良県磯城郡に伝わる怪火で、無数のクモが火となって空中を飛び回るとされます。この火に当たると死に至ると言われる危険な現象です。

権五郎火（ごんごろうび）

新潟県での伝承で、博打の争いから生まれた怨念が怪火として現れるとされています。この火は雨の前触れとも考えられ、見た農民は急いで収穫を行うべきだとされています。

地黄煎火（じおうせんび）

江州水口で、飴を売っていた者が盗賊に殺され、その執念が火となったという伝承があります。

スウリカンコ

青森県の伝説で、美しい女性が求婚者たちによって生き埋めにされ、その怨念が怪火となり飛び回るとされています。

煤け提灯（すすけちょうちん）

新潟県で語られる怪火で、雨の夜に湯灌の捨て場から現れる火の玉が飛び回るという伝承が存在します。

野火（のび）

高知県において山中や人里に出る怪火で、火の玉が突然爆発して星のような光になる現象です。

尻屋埼灯台（しりやざきとうだい）

青森県の灯台で、1945年の米軍の空襲後も光り続け、その報告があったことで話題となりました。明瞭な説明がないこの現象は、多くの人々の興味を引く要因となっています。

怪火は、各地でさまざまな形で人々の心に深く根付いている現象です。その存在は、自然現象の神秘だけでなく、文化や伝説の一部としても重要な位置を占めています。

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