怪談累ヶ淵

『怪談累ヶ淵』映画化作品群

『怪談累ヶ淵』は、日本の古典怪談を題材にした映画作品群であり、その歴史は1924年の長尾史録監督作品から始まります。この作品以降、二川文太郎、小倉八郎、中川信夫、そして安田公義といった監督たちが、それぞれ独自の視点でこの物語を映像化してきました。特に安田公義監督は、1960年と1970年に同じ題材で二度映画を制作しており、そのリメイク版も注目されています。

各作品の概要

1924年版『累ヶ淵』：長尾史録監督によるサイレント映画で、尾上紋十郎が主演を務めました。三遊亭圓朝の落語『真景累ヶ淵』をベースにしていますが、原作表記はありません。現存するフィルムは確認されていません。
1930年版『怪談累ヶ淵』：二川文太郎監督によるサイレント映画で、「三遊亭圓朝原作」と明記されています。この作品も現存するフィルムは確認されていません。
1937年版『怪談累ヶ渕』：小倉八郎監督によるサイレント映画で、板間清彦のオリジナル脚本です。こちらも現存するフィルムは確認されていません。
1957年版『怪談累が渕』：中川信夫監督による作品で、唯一上映用プリントが東京国立近代美術館フィルムセンターに所蔵されています。この作品のみがマツダ映画社に所蔵されていません。
1960年版『怪談累が淵』：安田公義監督による作品で、中村鴈治郎が主演を務めました。当初は長谷川一夫が主演予定でしたが、ファンからの反対により変更されました。DVDや配信でも視聴可能です。
1970年版『怪談累が渕』：安田公義監督が1960年版をセルフリメイクした作品で、石山律が主演を務めました。こちらもDVDで視聴可能です。

各作品の詳細

1924年版『累ヶ淵』

監督：長尾史録
脚本：上島量
撮影：河上勇喜
製作：帝国キネマ演芸小坂撮影所
上映時間：103分（7巻）
フォーマット: 白黒、スタンダードサイズ、サイレント
主なキャスト：尾上紋十郎、嵐璃徳、衣笠みどり

1930年版『怪談累ヶ淵』

監督：二川文太郎
原作: 三遊亭円朝
脚本：瀬川与志
撮影: 石野誠三
製作: マキノプロダクション御室撮影所
上映時間：118分（8巻）
フォーマット: 白黒、スタンダードサイズ、サイレント
主なキャスト：沢村国太郎、小金井勝、市川米十郎

1937年版『怪談累ヶ渕』

監督：小倉八郎
原作・脚本: 板間清彦
撮影：松本静八
製作: 極東キネマ
上映時間：不明
フォーマット：白黒、スタンダードサイズ、サイレント
主なキャスト：沢田敬之助、片岡左衛門、市川左正

1957年版『怪談累が渕』

詳細な情報が不足しているため、割愛します。

1960年版『怪談累が淵』

監督：安田公義
脚本: 犬塚稔
撮影：竹村康和
音楽：大森盛太郎
製作：大映京都撮影所
上映時間：90分（7巻 / 2,455メートル）
フォーマット：白黒、大映スコープ、モノラル
主なキャスト：中村鴈治郎、中田康子、浦路洋子
備考:当初は長谷川一夫が主演予定だったが、ファンからの反対により変更された。レーザーディスク、DVDで発売、配信もされている。

1970年版『怪談累が渕』

監督：安田公義
脚本：浅井昭三郎
撮影：牧浦地志
音楽: 鏑木創
製作：大映京都撮影所
上映時間：83分（8巻 / 2,260メートル）
フォーマット：フジカラー、ワイド、モノラル
主なキャスト：石山律、北島マヤ、笠原玲子

作品の保存状況

1957年版を除く、すべてのサイレント映画のプリントは現存が確認されていません。しかし、安田公義監督の1960年版と1970年版は、DVDや配信で鑑賞可能です。また、1970年版はLD版も発売されていました。

まとめ

『怪談累ヶ淵』は、時代を超えて愛される古典怪談を題材にした映画作品群であり、各作品はそれぞれの時代背景や監督の個性を反映しています。フィルムの現存状況やソフト化の状況も作品ごとに異なり、映画史における貴重な記録と言えるでしょう。これらの作品を比較することで、日本の怪談映画の変遷を辿ることができます。

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